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皇室とは? 皇族とは? ~池上彰さんに、いまさら聞けない「天皇」の話を聞いてみた

池上彰(ジャーナリスト)

2018年08月02日 公開

皇族に姓や戸籍がないのはなぜ?

二重橋

池上彰 天皇とは何ですかさあ、それでは皇族は、私たち一般の国民とどういう点が違っているのでしょうか。

わかりやすい違いとしては、皇族には姓(苗字)がありません。「秋篠宮」「常陸宮」は、天皇から与えられる宮号なので、苗字ではないのですね。

逆に皇籍から離れると一般国民となるので、姓を持つことになります。たとえば、2005年に黒田慶樹さんと結婚した紀宮清さや子さまは、結婚後、黒田の姓を持つようになりました。

また、天皇と皇族には戸籍や住民票はありません。その代わりに、歴代の天皇・皇后と皇族の身分や系譜を記録する「皇統譜」というものがあります。

細かくいうと、皇統譜には、天皇と皇后に関する事柄を記録する「大統譜」と、皇后以外の皇族に関する記録をまとめた「皇族譜」の2種類があり、それぞれ正本が宮内庁書陵部に、副本は法務省に保管されています。なぜ、天皇や皇族には姓や戸籍がないのでしょうか。これも日本の歴史を知らないとわかりません。

古代日本では古墳時代を通じて、大和政権という政治連合が成立していきます。そして、5世紀末から6世紀になると、大和政権は、大王(のちの天皇)を中心に、氏姓制度と呼ばれるしくみをつくっていくのです。

氏姓制度も歴史の授業で習いますよね。「氏」というのは、血族グループの呼び名です。蘇我氏、葛城氏、物部氏といった豪族がそうです。

大王は、それぞれの氏に対して、姓を授けます。姓とは、大和政権内の地位を表すもので、「臣」や「連」などがあります。「臣」は、大和政権を構成する有力豪族に、「連」は政務や祭祀など、特定の職業にたずさわって大和政権を支える有力豪族に与えられた姓です。

このように、古代の大和政権では、大王がそれぞれの氏に姓を授けるというしくみがつくられていきました。したがって支配者である大王には、氏も姓も必要なかったのです。

この大王がのちに天皇と呼ばれるようになり、皇族の範囲が定まっていくにつれて、皇族も天皇と同様に、氏や姓を持たなくなりました。そして朝廷の支配者ですから、戸籍を持つ必要もありませんでした。皇籍から離脱するときには、姓を与えられる点も現代と同じです。

このように、姓も戸籍もない天皇と皇族は、一般国民ではないので、私たちが持っているさまざまな自由や権利も制約されることになります。たとえば、選挙権もなければ、表現の自由や移動の自由、職業選択の自由もありません。

ただ皇室典範では、15歳以上の内親王、王、女王は、本人の意思に基づいて、皇室会議の承認を得ることができれば、皇族の身分を離脱できると定められています。ですから、極端なことをいえば、愛子さまや眞子さま、佳子さまは、どうしても皇籍を離脱したいと思ったら、皇族会議の承認をもらえれば、結婚する前でも皇籍を離れることができるわけです。

それに対して、皇族男子にはそういう自由がありません。さらに結婚も、皇族を始め内閣総理大臣や宮内庁長官ら10名で構成される皇室会議の承認が必要で、個人の意思だけで結婚することはできません。当然、結婚をしても皇族のままです。

現在の皇室典範では、皇族として生まれた男性は、一生、天皇あるいは皇族として生活しなければならないのです。

※本記事は、『池上彰の「天皇とは何ですか?」』より一部を抜粋編集したものです。

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