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大企業だけではない! 中小企業が続々とCSRを導入する理由

有馬利男 (国連グローバル・コンパクト ボードメンバー)

2018年11月29日 公開

今や「サプライチェーン」も企業のステークホルダーに含まれている

一昔前、経営者に「企業にとって社会に対する責任とは何ですか」と質問をすると「いい商品いい、サービスを提供して、雇用をつくり、給料をちゃんと払って、利益を上げ、税金をきちんと払う。そして株主に配当する。余裕があれば、寄附をしたり、ボランティアを派遣したりする」という答えが返ってきました。

対して今のCSRは、ビジネスプロセスの周りをステークホルダースが囲っているイメージです。

従業員や株主、顧客のみならず、バリューチェーン、サプライチェーンも利害関係者に含まれますし、さらには各種インフラや自然環境、それから子供たちの世代、孫の世代もステークホルダースだと言えるでしょう。

サプライチェーンに対する責任を負う、というところに違和感を覚える方もいるかもしれませんが、それはもはや常識です。

90年代後半、東南アジアのある工場が児童労働をさせていたとしてNGOから指弾されたことがあります。その工場にサッカーボールを作らせていたナイキは「資本関係もなく、ただ製品を買っているだけの工場だ。ナイキとは関係ない」としました。

しかし世界中でナイキの不買運動が起き、ナイキも「サプライチェーンにおける問題も自分たちの問題である」と認めたのです。

これが転換点でした。
すなわち、大企業が物をつくるさいに、部品を購入したり物流を任せたりするサプライヤー等の労働環境も大企業の責任でもあると考えられるようになったのです。

これを踏まえると、「CSRの経営」には3つの見方ができると、私は思っています。

「守り」と「攻め」、それから「貢献」の3つです。

「守り」というのは、人権問題や労働環境の問題、あるいは環境汚染などを機に、前述のナイキのように不買運動にまで「炎上」する事態を回避する、そういう「守り」の意識の経営です。

逆に、グリーンエネルギーやソーシャルビジネスなどを通じて積極的にビジネスチャンスを掴んでいこうとするのが「攻め」の経営です。

「貢献」というのは、寄付であったりボランティアであったり。各分野の専門家が社会貢献に参加していく「プロボノ」という動きもあります。それは企業にとっても大きなメリットがあること。

社外で社会問題に触れるうちに視野が広がり、社内にこもっていては得られない人的ネットワークも育てることができるからです。

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CSRがビジネスモデルそのものに組み込まれる時代に

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