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大企業だけではない! 中小企業が続々とCSRを導入する理由

有馬利男 (国連グローバル・コンパクト ボードメンバー)

2018年11月29日 公開

CSRがビジネスモデルそのものに組み込まれる時代に

最近「マテリアリティ」という言葉がよく使われるようになりました。これはCSR活動における重要課題のことです。

事業にはたくさんの段階があります。資材の調達から、研究開発、生産、社外での販売等々ですが、その段階に応じてやるべきCSRの取り組みがあります。例えば研究開発から生産に至るまでの段階では、従業員の能力開発や、各生産拠点でのゼロエミッション、という具合です。

これを一歩進めと、CSR経営ではこうした活動をどのように経営のなかに位置づけていくか、あるいは自社のビジネスモデルにどう組み込んでいくか。

さらに具体的にいうと、中期経営計画のなかにこうした活動がどう入り込むか。そういうことが重要になります。そこで「マテリアリティ」という考え方が出てきます。

例えば、私が社外役員を務めているキリンホールディングスは、CSV推進本部をもうけ、中期経営計画のなかにマテリアリティを盛り込んでいます。キリンのマテリアリティは「健康」「コミュニティ」「環境」。

この3つが自社の事業とステークホルダースにとって非常に重要であるということです。例えば健康。キリンは協和発酵キリンという会社で製薬もしています。キリンといえば飲み物が有名ですが、「健康」という切り口から新しい事業を作り出し、社会貢献していこうとしているわけです。

同じように、グローバル・コンパクトに加盟している会社の多くが、マテリアリティをビジネスモデルそのものに組み込もうとしています。
 

持続的な成長には「非財務的」な目標も盛り込む必要がある

「ESG」の考え方も世界的に広まりました。「ESG」とはEnvironment(環境) 、Society(社会) 、Governance(統治)の頭文字をとったもの。

従来、業績ばかり気にしていた投資家側も、それでは持続可能な経営は望めないという認識に至るケースが非常に増えてきています。2006年には、国連のグローバル・コンパクトと国連環境計画が主導し、投資機関に対しESGにコミットするよう呼びかけました。 

日本でも2014年に「スチュワードシップ・コード」を金融庁がつくりました。これは機関投資家に求める行動規範であり、企業がESGに対応しているかどうかを見極め、投資の判断材料とするよう求めるものでした。金融庁が出したものですから、これはかなり大きなインパクトがあるものです。

そして2015年、金融庁は投資される企業側に対して「コーポレートガバナンス・コード」を示しました。これは、財務的な数値計画のみならず、非財務的な目標も経営に盛り込むよう求めるものです。

私は国連グローバル・コンパクトのボードメンバーなのですが、同じくメンバーの1人に、ユニリーバのポール・ポールマンCEOがいます。2011年、彼がCEOになった初日に「ユニリーバは今後、四半期の報告、予測は一切やらない」と宣言しました。

私が「大丈夫?」と尋ねると、「そんなことを気にする投資家は要らない。もっと本質的な経営を見てくれる人たちからの投資を受け入れたい」と言いました。その結果どうなったか。

彼がCEOに就任して5年経った頃、様子を聞くと、「会社の価値は倍になった。そのぐらい投資家に評価されている」と彼は答えました。

このような、業績以外の部分を重要視する動きは加速しています。世界のESG投資のデータ、つまりESGにコミットしている投資機関が動かしている総投資資産額を見てもそれは明らかです。

世界の運用資金に占めるESGにコミットしている機関のシェアが2016年で30%に、上位20社だけなら75%にまで達しているのです。「守り」のCSRというより「攻め」のCSRが拡大している証左だといえると思います。

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