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生き方

"昭和脳の夫"に家事を手伝わせる一言

齋藤孝(明治大学文学部教授)

2018年11月21日 公開 2022年12月21日 更新

夫から「お前は全然だめだ」といった言葉の暴力を受けるとき

「この紙のリストが五回になったら、二人の関係を考えさせてもらいます」

これは深刻な問題ですが、この場合、言われた言葉を一枚の紙にまとめて打ち出すことをおすすめします。

自分が受けた言葉を、次のように分類し、日付を書くのはいかがでしょうか。

例えば、言葉の暴力タイプAは稼ぎに関すること。「誰が稼いでいると思っているんだ。2014年10月20日」「お前のほうが稼ぎが少ないんだから黙ってろ。2017年2月1日」といったもの。
タイプBは人格攻撃。「お前は全然だめだ。2016年4月4日」「お前は育ちがおかしいよ。2018年10月26日」といった具合です。 

紙を打ち出したら、これをダイニングなどに貼っておきます。そして、言葉の暴力を受けるごとに、その場で書き加えていく。こうすれば夫にとっても一目瞭然です。

この作業には、もう一つメリットがあります。夫に言われた言葉を、冷静に客観的に書き留めるという作業を行なうことで、自分の混乱した気持ちや怒りもだんだん落ち着いていくのです。

大事なのは、夫の言葉の暴力で受ける心の傷を最小限にすること。一枚の紙が、ぶつかり合う感情の緩衝材になってくれるのです。

その上で、条件をつくります。例えば、「この言葉の暴力が五回になったときには、二人の関係性自体を考えさせてもらいます」といったものです。一回、二回は許容するとしても、五回となると今後も直らないと見なすことができます。ならば、妻が幸せになる選択肢は離婚しかありません。

場合によっては、夫の側が、自分の発言が言葉の暴力であることに気づいていないことがあります。あるいは、その頻度を把握していないこともあります。客観的に事実を二人で共有するために、一枚の紙に状況をまとめる必要があるのです。

暴言を記録する理由はもう一つあります。それは、いよいよ離婚ということになったときに、離婚事由について具体的な事例を日付も含めて示すことができる、ということです。ここまで具体的な記録が残っていると、夫も否定することはできません。裁判を有利に運ぶことができます。

功利的なことを言っているように思われるかもしれませんが、離婚裁判で有利な条件を引き出すことは、その後の人生を幸せに過ごすためにはきわめて重要なことです。

一方、そこまで深刻な事態ではないけれど、男の無神経な言葉でイヤな気持ちになることがある、という人も多くいらっしゃることでしょう。そういうときでも、紙に言葉を書き留めて相手に示し、自覚を促すことがお互いにとって有益です。多くの場合、無神経な言葉を発している男は、自分の言葉で相手が不快な気持ちになっていることに気づいていないのですから……。

紙に書いて示すのは、セクハラ防止にも有効です。

職場で「まだ結婚しないの?」という言葉を発することがNGなのはわかりやすいですが、「鈴木さんはいつも笑顔で素敵だね」といった言葉でも、関係性によってはハラスメントに当たることもあるでしょう。

そうしたときに、言われた側がその言葉を書き留めて、「顔についての発言は基本的にNGですが、35歳までのイケメンは許されることがあります(笑)」とユーモラスに書き添えると、とげとげしくなりません。

目的はあくまで、どこまでがOKで、どこまでがNGになるのかを示すことです。ですから、「このような言葉はOKです」と、OK言葉の具体例を示してあげるといいでしょう。「休みの間、どこに行ってきたの?」はOKですが、「誰と行ってきたの?」はNG、という具合です。

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