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"昭和脳の夫"に家事を手伝わせる一言

齋藤孝(明治大学文学部教授)

2018年11月21日 公開 2022年12月21日 更新

"昭和脳の夫"に家事を手伝わせる一言


写真:長谷川博一

<<日常には、言いたいことを言えない場面が少なからずあります。本当に言わないほうがいい場合も多々ありますが、ちゃんと言わないとますます不利な立場に追い込まれたり、事態を悪化させたり、お互いに気まずい思いをしたりすることも多いと思います。

しかし、どんなに言いにくいことでも、わずか15秒で済ませられるなら言える気がするのではないでしょうか。ポイントは、どんな言葉を選び、簡潔に意図を伝えるか。語彙力や文脈力の問題でもありますが、うまい言い方というのは、考えればけっこうあるものです。

困った夫の態度を変えてもらいたいときにも、有効な一言があります。二つのケースを取り上げたいと思います。>>

※本稿は齋藤孝著『15秒あれば人間関係は変えられる』(PHP研究所刊)より一部・抜粋編集したものです
 

家事を手伝わない夫に家事をさせたい

夫を動かす話し方(齋藤孝)
イラスト:たつみなつこ

「全部私が家事をしていると、だんだんやる気もなくなってきちゃうの。まず、何か一つだけ、手伝ってくれないかな。何ならできる?」

いまの世の中、夫が家事をまったく手伝わないということが通りづらくなってきました。しかしそれでも、自分のほうから「家事を手伝うよ」と申し出てくれる夫ばかりではありません。その場合は妻のほうから手伝うように要請することになりますが、どのように頼めばいいでしょうか。

まずは一つ、夫が負担する家事を決めることを持ちかけてみてはいかがでしょう。

「全部私が家事をしていると、だんだんやる気もなくなってきちゃうの。まず、何か一つだけ、手伝ってくれないかな。何ならできる?」

何ならできるのか、を訊くことがポイントになります。男は総じて、自分ができることを披露したいという気持ちを持っています。できそうなことを訊くことで、夫のやる気を少しずつ引き出すのです。

また、夫に選択権を与えることも大事です。人間は、他人から与えられた命令に対しては、心のどこかで「別に言うとおりにしなくてもいいだろう」と思いがちですが、自分が言ったことは守ろうとします。

「学生時代は自分で洗濯をやっていたから、洗濯くらいはできると思うよ」といったセリフを夫に言わせることで、「自分で言ったからにはやらなきゃ」という気持ちにさせるのです。

何ができるかは、人によって千差万別です。「料理ならできる」とか、「部屋の整理なら得意」とか、それぞれ得意分野があります。まずはそうした得意分野を負担してもらうことを習慣にします。頃合いを見計らって、「いつも本当に助かってる。あなたに頼むときっちりやってくれるから、もう一つお願いしたいの」と打診します。

このように、夫をおだてながら家事に巻き込んでいくとよいでしょう。夫のほうも、妻が家事を手伝ってもらいたいがためにお世辞を言っていることはわかっているのです。しかし、そのように妻が気遣ってくれることに対して、自分も報いなければならないという気持ちになるのです。

逆に、家事の出来栄えに文句を言われると、夫のほうは一気にやる気がなくなってしまいます。妻の側からすれば当然のことを言っただけだという思いでしょうし、夫もそんなことでやる気を失ってはいけないと思うのですが、現実問題として夫のモチベーション低下は避けなければなりません。

文句を言うときも「いつも助かっているけど、一つだけ直してほしいところがあるの」といった具合に、言葉をオブラートに包んだほうがうまくいくでしょう。

あとは夫も納得できる「家事を手伝う理由」を、ふだんから言っておくといいでしょう。

「私が早く死んでしまったときに、自分で家事ができなかったら困ってしまうでしょう? そのための準備も必要だからね」
「子どもが大きくなったら、家事を手伝わない男は結婚できない時代になっているわ。そんな夫の姿を息子に見せてもいいの?」

などと冗談ぽく言えば、夫も苦笑しつつ「まあ、たしかにそのとおりだな」と思い、モチベーションを保つことにつながるのではないでしょうか。

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夫から「お前は全然だめだ」といった言葉の暴力を受けるとき

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