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たった一言の失言で役員昇格を逃した有能社員 言葉と教養の深い関係

2018年11月22日 公開

佐々木常夫(元東レ経営研究所社長)

佐々木常夫(元東レ研究所社長)

<<語彙力、雑談力、教養力など、日常的な会話で問われる「言葉」に関する書籍が支持されている。

しかし、元・東レ経営研究所社長の佐々木常夫氏は「知識だけをいくら集めても、『本当の教養』は身につかない」と断言し、「ビジネスマンにおける教養とは、成果に結びつくものではならない」と提唱する。

成果を出すのに必要な「ビジネスマンが身につけたい本当の教養」における、「言葉の重要性」について紹介する。>>

※本記事は、佐々木常夫著『人生の教養』(ポプラ社)より、一部を抜粋編集したものです。

 

あなたの言葉には行動がともなっているか

言葉は世間にあふれています。無数の言葉が毎日毎刻あらわれては消えていきます。

たとえば、私も委員としてかかわることの多いワーク・ライフ・バランスの動き。このワーク・ライフ・バランスという言葉も相当に空洞化しやすい言葉の一つです。

政府の働き方改革の流れに沿って、会社で働く時間と家庭で過ごす時間の配分を見直すべきだと説く人がいるとします。しかし、そういう人の実態こそ仕事は残業だらけで、家庭は妻に任せきりというワーク・ライフ・アンバランスの上に成り立っていることが多い。そうやってこれまでの日本のビジネスマンは偉くなってきたからです。

このように、口ほどには内実がともなっていない。言葉と行動が一致しないケースもまた、腐るほどあります。

言葉は人の心をあらわす道具であると同時に、心を隠す道具でもあります。きれいな言葉、もっともらしいセリフを吐く人ほど中身が薄い、実践をともなっていないと眉に唾をつけるべきかもしれません。

 

吉田松陰が日本有数の教養人である理由

もし、言葉に中身を込められる人、言葉に行動がともなう言行一致の人を教養人と呼ぶのなら、幕末の吉田松陰などは日本有数の教養人といえるでしょう。

なぜなら第一に、松陰は単なる思想家ではなく、「徹底した実践者(実学者)」でした。知識を得ること以上に、志を立てることに重きを置き、その志を実行することをさらに重んじたのです。「立志と実行」。これが松陰という傑物の“中身”であり、真骨頂でした。

すなわち、実践がともなうのでなければ、どれほど知識を蓄えようとも、何の意味も価値もないと考えていたのです。だから松陰ほど、あの当時、全国を歩き回り、多くの人に教えを請い、現地の生きた情報を収集した人間はいません。

そのために脱藩を企て、ついにはペリーの黒船に乗り込んで、海外への渡航を懇願したせいで牢獄につながれたりもしたのですから、その行動力は並み外れていたとしかいいようがない。それも攘夷思想の激情にかられてというよりも、見たことがないものを見たい、知らないものを知りたいという純粋な好奇心に突き動かされての行動力の発露であったというべきでしょう。

また第二に、松陰は「すぐれた教育者(指導者)」でした。のちの明治維新を担う何人もの人物を、ただ単に自分の知見を授けて教え育てただけでなく、つねに「きみはどう思う」「何をすべきか」と問い続け、対話し、自発的な思考や行動を促しました。

あるいは、彼らの素質能力をよく見抜き、それを伸ばしていく道を示すとともに、「ぼくはきみたちの師ではない、同志だ、ともに学びあおう」と謙虚な心で、師と弟子の対等性を実現した稀有な教育者でもあった。

もし松陰が、こうした「行動する人」「教え、促す人」でなかったなら、あのような限られた地域から、あんな短期間のうちに、あれほどの人材が輩出されることはなかったに違いありません。

いまでも松陰の故郷の山口県(長州)では、「先生」と呼ばれるのは吉田松陰ただ一人なのだそうです。他に先生と呼称される教師や政治家などはたくさんいても、真に先生の敬称に値する人物は松陰のみ。それも当然といえるかもしれません。

松陰がいまの時代に生きていたらどうだったでしょうか。どんな人生を送るにしても、おそらく秀でた識見と、「いったことは必ずやる」行動力を兼ね備えた教養人の一人になったはずです。

その言行一致を平成の私たちも心がけたいものです。

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