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社会

グーグルに買収されたスタートアップ 知られざる「その後」

大熊希美(翻訳家)

2018年12月18日 公開 2018年12月19日 更新

グーグルのミッションのために――新プロジェクトに桁外れに大きな予算を投入

さらに、グーグルはストリートビューで撮影したデータを元に自社の地図データを作る「グラウンドトゥルース」プロジェクトを始動する。これは、それまでジオチームが手がけたどの事業より予算も事業規模も桁外れに大きいものだったが、このプロジェクトの予算もグーグルは迷いなく承認するのだった。

経済合理性を考えたら、ストリートビューもグラウンドトゥルースもそう簡単に認められるものではなかっただろう。グーグルマップにグーグスアース、もちろんストリートビューといった機能はほぼすべて無料で提供しているのだ。

ただ、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンにとって重要だったのは売上や利益ではなく、ユーザーに素晴らしい体験を届けることであり、それが意思決定の基準だった。本書にはこう書いてある。

(抜粋)
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グーグルが関心を持っているのは一つだった。世界の地理情報を整理するため、プロダクト開発に大胆に投資すること。そしてそれらをグーグルマップとグーグルアースという素晴らしいプロダクトを介して無料で世界に開放することだ。
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グーグルのミッションは「世界の情報を整理すること」だが、ジオチームの一連の地図プロダクトで目指していたのは、デジタル世界の中だけでなく、物理世界をも検索可能にすることだった。

キーホールのミッションがグーグルのミッションと相性が良かったというのもあるだろう。グーグルはキーホールを買収した後も基本的にはチームの運営を彼ら自身に任せ、必要なリソースを提供した結果、彼らは世界中の多くの人が使う地図サービスを作り上げるという偉業を成し遂げることができた。

もちろんこの手法が必ずしもうまくいくとは限らないが、キーホールのように強いリーダーシップとミッションを追求する力のあるチームを買収した際には、彼らの仕事を全力でサポートする ことこそが、突き抜けたプロダクトを育む最適な方法であるのかもしれない。

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