通信障害どころではない! クリントン元大統領が告発する"アメリカの脆弱なセキュリティ"
2018年12月14日 公開 2024年12月16日 更新
<<先日のソフトバンク回線の大規模通信障害では、現代人の生活がどれほどインターネットに依存しているかが証明されたのではないだろうか。全国各地で発生したネットワーク難民が、Wi-Fi(無線LAN)を求めて街をさまよう姿をテレビはこぞって放送したが、ネットに接続できなくなった人々はあまりに無力だった。
今回はソフトバンクが使用していたエリクソン社製通信機器の電子証明書切れが原因と分かり、半日と待たずに復旧となった。致命的な被害はなく、人々はふたたびインターネットを通じたコミュニケーション、ショッピング、情報収集に勤しんでいる。
だが、悪意を持った組織や個人が、ネットワークに対する大規模テロを成功させた場合、私たちの社会はどうなってしまうのか? そもそもそのようなテロは可能なのか?
元アメリカ大統領ビル・クリントンは、そのデビュー小説『大統領失踪』のなかで、そのシミュレーションを行っている――>>
アメリカはサイバーテロに弱い?
現在、第42代アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンは、世界的ベストセラー作家のジェイムズ・パタースンとの共著で発表した小説『大統領失踪』(早川書房刊)のキャンペーンで全米を回っている。
この小説は、架空の大統領ダンカンがアメリカを襲うサイバーテロに対抗するために、ホワイトハウスを単独で抜け出し奮闘するというスリラーだ。
クリントンが直近のフロリダでのキャンペーンで言及して話題となったのが、現トランプ政権は「国防費の5%程度しか割かれていないサイバーセキュリティ予算を大幅増額すべき」との主張だ。
クリントンによれば、相互接続が高度に進んだアメリカは「主要国の中で(ネット・セキュリティ面で)もっとも脆弱な国であり、小説の中で描いたようなサイバーテロに襲われる危険性が十分にある」と言う。
作家でありサイバーセキュリティの専門家である一田和樹氏も『大統領失踪』の書評(「超限戦」時代、軍事大国アメリカの迷走 - 書評「大統領失踪/」)の中で「アメリカは世界有数のサイバー攻撃に弱い国家だ」と書いている。
たしかに、2016年の大統領選にロシアの介入を許してしまったことを考えれば、クリントンの言うことには一理ある。そもそも、大統領の椅子に手が届きかけていたヒラリー・クリントンは、不利なメールが大量流出させられたことがひとつの契機となり、トランプに破れたのだ。だから、クリントン家自体がサイバー攻撃の被害者とも言える。