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若いリーダー層に任せて築く。「物件」ではなく「人」にフォーカスした不動産事業

堀口智顕(サンフロンティア不動産代表)

2019年04月26日 公開

 

若いリーダー層に任せるフェーズに突入

サンフロンティア

――まさに波乱万丈です。

堀口 ありがたかったのは、沈みかけていた会社に、100人以上の社員が残ってくれたことです。その社員の皆に、「社長として命がけで皆さんを守る。社員の幸福が経営の一丁目一番地」と言い、ひとりも解雇しませんでした。

当時、売り上げは12分の1にまで落ちましたが、「会社をつぶさない」という気持ちは切らさなかった。そこに向かって、私を筆頭に社員皆が一致団結し、歯を食いしばって頑張りました。皆の「心が割れなかった」のが大きかったです。

また、厳しい状況に置かれていても、3,000字の「社長講話」は1回も休むことなく続け、社員と私の意識を高めていきました。この修羅場を必死になって乗り越えたことで、社員も私も大きく成長することができたのです。そして幸いにも、次代を担うリーダー層が生まれ、育っていくことになります。

――新たなリーダー層の人々が、会社を背負っていく時代のスタートですね。

堀口 わが社の歴史は、リーマン・ショックを挟んで2つのフェーズに、はっきりと分けられると思います。リーマン・ショック前までは、私が中心になって経営を主導し、社員の皆を盛り立て、成長を促し、業績アップをもたらしてきました。

しかし、リーマン・ショック後は、力をつけた新たなリーダー層を中心に、「皆で経営をしていく」フェーズに変えていきました。そして最近3年間ほどは、利益の85%を生み出している既存事業に関しては、副社長以下、新しい若いリーダー層に経営を任せ、活躍してもらっています。私は新しい事業に挑戦、開拓していく役割を担っているのです。

――なるほど。バトンタッチされているのですね。皆さん、リーダーとしてある程度のレベルに育っているということですか?

堀口 「任せて安心」のイメージです。彼らは、リーマン・ショック前の勢いのある時代も知っていて、その後の激動期を乗り越えた人たち。「南極で氷を売る」、そんな世界を経験した連中です。お互いが心の底からわかり合える存在です。

物事の考え方、人間としての生き方―人は何のために生きるか、自分の抱くべき価値観は何か――という部分がぶれない仲間なのです。

われわれは、「人のため、世のために尽くすことこそが人間として最高の行為だ」という稲盛塾長から教えられた言葉を肝に銘じ、「一生をかけてどれだけ多くの人に役立たせて頂けるか」を考えて仕事を行っています。わが社のリーダー層の価値観はここにすべて帰着しているのです。

――その一方で新規事業は、社長の強いリーダーシップで進めておられるのですね。

堀口 いいえ、新規事業についても、任せるところは任せています。私は扉を開き、道筋をつけるところまでです。

2017年11月、私の故郷、新潟県の佐渡島において、地域創生の思いを込めてスタートした事業が、1年間で社員が100人ほどに拡大しています。

佐渡島は夏には観光客が押し寄せる一方、秋以降は閑散とし、観光業の拡大に苦労していました。それを変えようと、地元の中でも優秀な選りすぐりの人財が、私の新規事業に集まり、佐渡島の観光を通年で活性化すべく、さまざまなアイデアを出してくれています。

私は、ヒントは出しますが、命令はしていません。「どんどんやれ」と、うしろから応援しているだけです。その流れで、タクシー会社をM&Aさせて頂き、トヨタのアルファードのような高級ワゴン車のタクシーを走らせ、観光の質を高める試みを始めます。

また、老舗の日本旅館の活性化にも取り組んでいます。このようなことを、これからどんどん、頭の柔らかい若い人に任せてやってもらうのです。

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