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若いリーダー層に任せて築く。「物件」ではなく「人」にフォーカスした不動産事業

堀口智顕(サンフロンティア不動産代表)

2019年04月26日 公開 2024年12月16日 更新

若いリーダー層に任せて築く。「物件」ではなく「人」にフォーカスした不動産事業

1999年、堀口智顕氏によって創業されたサンフロンティア不動産。都心の中小型の既存オフィスビルを再生させるという特徴的なビジネス戦略を中核にして、伸びてきました。

また堀口氏は熱烈な盛和塾生。稲盛和夫氏を人生の師と仰ぎ、その経営哲学を実践することで、2004年にJASDAQ上場、2007年には東京証券取引所第一部上場を成し遂げます。

しかし、リーマン・ショックで同社は倒産の危機に瀕します。その修羅場を「社員と一致団結」して乗り越え、その後は増収増益が続き、20%を超える売上高経常利益率を誇る、高収益企業に変貌を遂げたのです。

以下、リーマン・ショックを乗り越え「次世代リーダー層」を育て、任せて経営を展開し、成長を生み出してきた堀口氏に、リーダー教育の実践と哲学を伺います。

 

ビルオーナー、一人ひとりの「お困りごと」を解決

――まずは、御社の事業についてお教えください。

堀口 私どもは不動産業を営んでいますが、「都心」かつ「オフィス」に特化し、リプランニング事業と呼ぶ「東京都心部において、中小型の既存オフィスビルを、その物件の持つ特性を高めエリアのニーズを捉えた高付加価値な物件に生まれ変わらせる不動産再生事業」を強化して業績を高めてきました。現在、東証一部に上場させて頂いております。

――現在、経常利益率が20%以上もあると聞きます。昨今、不動産がピークを打ってきているように思えるのですが、ここまで高い利益率を確保できているのはなぜですか?

堀口 それは、「お客様視点」で高い付加価値を生み出しているからです。合言葉は「変わるのは自分、お客様視点でお困りごとを解決する、期待以上で応える!」です。「変わるのは自分」を重要視した考え方をベースに、社員皆が力を合わせ、お客様のお困りごとの解決に取り組み、期待を超える結果で喜んでいただくこと。そのことによって、連鎖複合型のビジネスモデルが生まれ、成果に繋がっているだけなのです。

わが社にとってのお客様とは、ビルオーナー、経営者、資産家、富裕層の方々です。そして「物件」ではなくお客様、つまり「人」にフォーカスしています。その象徴が経営方針「利を求むるに非ず、信任を求むるにあり」に結実しています。

――「利を求むるに非ず、信任を求むるにあり」ですか。

堀口 お客様には一人ひとりの人生があり、「お困りごと」を抱えておられます。その「お困りごと」を担当者がとことんお客様に寄り添い、何気ない会話の中からでも教えていただきます。

時間と手間を惜しまず、3時間でも4時間でもお客様の話を聞きます。たとえば、賃貸担当者が賃貸営業をせず、お茶を頂きながらお客様と家族構成や相続問題、ビルの老朽化への不安について、話を聞き込んでいくのです。

そしてその情報をビル管理、建築企画、税務、滞納賃料保証などの各分野のエキスパートと連携し、問題の解決に全社の力を結集して取り組み、お客様の「不」を解決していきます。

当社のリプランニング事業は、こうしたお客様の声を真摯に受けとめ、商品づくりに生かし、一物一価の再生商品として作り込んでいきます。「お客様の喜び」のために各部門が知恵を出し合い、率直に建設的に議論することで、質の高い「リプランニングのプロジェクト」が完成する。その結果として売り上げ、利益に繋がっているだけなのです。その利益は貢献した各部門に分配されていく仕組みです。

このようなビジネスモデルを形にできている会社は、不動産業界では実は少ないのです。社員の価値観が合わないと部署間の思惑がぶつかり合い、売上や利益の奪い合いが起きて、プロジェクトが失敗してしまいます。

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急成長後に味わった倒産の危機

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