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日本のものづくりを支える 「放電精密加工研究所」 の危機を解決したアメーバ経営

二村勝彦(株式会社放電精密加工研究所会長)

2019年08月07日 公開 2019年08月07日 更新

 

フィロソフィ手帳が果たした役割

放電精密加工研究所

――一方で、フィロソフィ教育も導入されました。

(二村)当社の社是は「善」。創業者が経営に悩む中で見出した経営の指針だと聞いています。「人間は、常によりよくなりたいと願う動物だ」。社員が増え拠点が増え、個人主義的な考えも出てくるなか、組織の導き方に悩んだ創業者が見出した真理です。

この気づきを「善」の一文字にあらわしたのです。稲盛経営哲学で言うならば“敬天愛人”や“利他”に近い概念といえるでしょう。そして人間関係やお客様や社会との関係においては「公第一、私第二」を標榜しており、企業は公のものであることを明確にしています。

このように、創業者の明確な考えに基づく会社の方針があったのですが、それを具体的に、社員一人ひとりが日々の自らの行動で実践すべきか、それを「フィロソフィ手帳」の中に記していったのです。

課長・係長クラスを20人ほど集めてプロジェクトチームを作り、彼らの間で知恵と工夫を凝らして、100箇条に仕上げたのです。この手帳を全員で輪読し、日々、気が付いたことを手帳の内容にリンクさせて、社員各人が交代で発表しています。

――「フィロソフィ手帳」が重要な役割を果たしつつあるのですね。

(二村)そうです。私は「フィロソフィ手帳」で、社員みなが価値観を共有しあい、心を一つにしているからこそ、アメーバ経営の採算管理がきちんと進んでいると考えています。アメーバリーダーが身につけたフィロソフィは、マスタープランの遂行、月次予定の設定、その達成に向けたアクションプランにも色濃く反映されているのです。

あるリーダーは、自身とメンバーが共に目標に挑戦し続ける仕掛けに工夫を凝らしています。時間当り採算向上への挑戦では、時間短縮目標を1人・1日単位に落とし込んで呼びかけたようです。例えば「明日の残業をみんな20分減らそう!」というように。

このような身近な目標設定がメンバーの挑戦心を持続させ、時間当り採算は2012年度に4,200円でしたが、そこより大きな投資をしたにも関わらず、2018年度では時間あたり4,600円で上昇もしており、嬉しい限りです。

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「利益をきちんと生み出す会社」へ。部品メーカーへの挑戦

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