人生100年時代は、「脳とのつきあい方」を根本から変える必要がある
── 加藤さんの今後のビジョンをお聞かせください。
世の中に根づいている「能力観」を変えていくことです。人生100年時代といわれるいま、認知症への恐怖は高まる一方。それに対処することが、世界的に重要な課題とされています。
現実に目を向けると、いまだに「一定の年齢を越えると、脳を成長させることは難しい」という能力観が残っています。ですが、研究を通じて、脳は一生を通じて変化し、成長する可能性を秘めていることは明らかになっているのです。
認知症の予防や改善を促すうえで求められるのは、「自分の行動を変えていくことで脳番地が鍛えられ、脳自体が成長する」という能力観です。この考え方がもっと普及すれば、自分自身の脳を健康に保とうという人が増えていく。
さらには、そうした能力観に基づいた「人生のつくり直し」「社会の仕組みのつくり直し」が進むでしょう。一人ひとりの能力に対する見方も変わり、その人がいま表現している能力だけでなく、今後の能力の伸びしろという視点でも捉えられるのではないでしょうか。
私は14歳のときに「脳を鍛える方法を知りたい」と医師をめざし、30年以上、研究とともに講演や書籍執筆などを続けてきました。
一貫してあるのは、脳を知りたいという探究心ですが、講演などを聞かれた方から反響があるのを見て、「自分が研究してきたことを、社会をよくするために活かしたい」と思い至ったのです。
個人の脳の平和なくして世界の平和は存在しません。その実現に少しでも寄与することが私の願いです。