漢帝国と古代ローマ帝国が「ほぼ同時に衰退」した“偶然ではない”理由
2020年01月13日 公開 2024年12月16日 更新
予備校の人気世界史講師である神野正史氏は、世界史を「暗記」しようとしては、かえって覚えられないと主張する。
固有名詞や年号を無理に覚えようとせず、また各国の歴史をばらばらに勉強するのではなく、「歴史の流れ」を理解することを目指す学習法で、学生によっては1年間で偏差値を20~30上げることができるという。
ここでは、神野氏の新著『暗記がいらない世界史の教科書』より、ローマ帝国と漢帝国の衰退の関係について触れた一節を紹介する。
※本稿は神野正史著『暗記がいらない世界史の教科書』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです
世界の歴史はすべてひとつの流れのなかにある
私が予備校の教壇に立つようになって30余年。その間、数えきれないほどの学生をみてきましたが、私と出逢う前から「正しい世界史学習」をしている学生を見たことがありません。
現実の「世界の歴史」は、各国の歴史が「世界史」という枠の中で密接に関わり合いながら動いています。
それを無視して「世界史」は語れず、それを究明・理解していくことが「世界史」という学問の神髄なのであって、それがないものは「各国史の寄せ集め」にすぎません。
歴史には「流れ」というものがあり、その流れには「段階」があり、その段階ごとに「特性」があり、その中に生きている人々や国々は、つねにその時代ごとの「特性」の枠の中でしか動けないため、一見ばらばらに動いているように見えて、じつは統一的・調和的な動きをしているのです。
今回は、その一例を示したいと思います。
気候が変動すると王朝が交代する
西暦200~400年ごろ。この時代は世界中で寒冷期となり、環境の激変で、前時代まで栄えていた国はそろって衰亡し、これまでくすぶっていた地域からは盛国が現れた時代です。
永らく広域の統一を維持してきた二大帝国・ローマと漢王朝はこの時代の上半期には歩調を合わせるようにして亡びに向かい、下半期はどちらも次時代の「分裂時代」への過渡期となります。
上記二大帝国に挟まれていた地域においても、前時代に隆盛を誇ったクシャーナ朝・サータヴァーハナ朝がやはり分裂・解体を繰り返して衰亡していきます。
これに対して、前時代まで永らくくすぶっていた地域(イラン・北インド)にはササン朝・グプタ朝が生まれて隆盛期に入りました。
より具体的に見てみましょう。永らく続いていた温暖期もついに終わりを告げ、この時代からはふたたび寒冷期に突入します。
温暖期から寒冷期またはその逆と、気候が大きく揺れるときにはそれまで繁栄を謳歌していた国は潰え、前時代まで影も形もなかった国・くすぶっていた国が隆盛するという逆転現象が起きます。
この時代も例外ではありません。
前時代(古代 第8段階)まで安定期にあったローマ帝国・後漢王朝・クシャーナ朝・サータヴァーハナ朝は、この時代(古代 第9段階)の幕開けとともに一斉に崩壊が始まり、前時代まで混乱・分裂・服属に甘んじてきた国々が隆盛期に入ります。