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牛乳で「おなかがゴロゴロする」根本原因

浦島匡,並木美砂子,福田健二

2020年01月23日 公開 2020年01月27日 更新

 

乳糖はどのように吸収されるか

乳糖はガラクトースという単糖とグルコース(ブドウ糖)とが結合した二糖というつくりの化合物です。

しかし人間の体では、二糖のままでは乳糖を腸内で消化吸収できません。

小腸の表面(上皮微絨毛刷子縁)にあるラクターゼという酵素によって、ブドウ糖とガラクトースに加水分解されて、はじめて細胞内に取り込まれます。

ブドウ糖は循環系に入って細胞のエネルギー源として利用されますが、ガラクトースはいったん肝臓にいき、そこでグルコースに変えられ、同じようにエネルギーとして利用されます。

 

なぜ牛乳を飲むと「おなかがゴロゴロ」するのか?

牛乳を飲むと、おなかがゴロゴロする……。共感される方も多いのではないでしょうか?

じつはこのことにも乳糖(牛乳に含まれる糖の一種)が深く関係しているのです。

そんな人のおなかの中は、本来乳糖を消化できるはずのラクターゼ(牛乳に含まれる乳糖を分解するためのタンパク質)の活性が低下しているので、牛乳を飲むと、乳糖が小腸で吸収されずに大腸に進みます。すると浸透圧によって、水分が大腸に染み込んできます。

さらに乳糖をガスに変えるような腸内細菌の増殖によってガスが溜まり、おなかはゴロゴロいい、ついには下ってしまうのです。このような症状を乳糖不耐症といいます。

乳糖不耐症は、離乳後にラクターゼの活性が低下することが原因で起こる症状です。

よく考えてみると、離乳した後に乳を飲み続ける動物は人間だけで、本来動物は、育つと母乳を飲まなくなるので、乳糖の分解が必要なくなるわけです。

ラクターゼの活性低下は自然の成り行きといえるでしょう。歴史的に栄養の多くを牛乳に依存していた北ヨーロッパの人々のなかに、あるとき離乳後もラクターゼ活性の低下しない人々が突然変異によって出現し、それが広がったのではないでしょうか。

 

牛乳を飲み続けると起こる「いいこと」

アジアやアフリカの多くの人々は、現在でもそのような変異したラクターゼ遺伝子をもっていないので、牛乳の中の乳糖を消化することはできません。牛乳を飲むとおなかが下るのは、日本では、とくに高齢者に多いといいます。

給食などで牛乳が飲まれている近年には、牛乳はあたりまえの存在に思えますが、日本人が牛乳を普通に飲むようになったのは、戦後、学校給食に脱脂乳が導入されるようになってからです。それまでは牛乳を飲む習慣がなかったためでしょう。

現代日本人の多くが、平気で牛乳を飲み続けているのは、乳糖不耐症であっても、必ずこのような症状が出るというわけではないからです。

実際には下痢などの症状なく牛乳を飲んでいる日本人の若い人でも、乳糖不耐性の検査をすると、多くが乳糖不耐症にあたります。

なぜ牛乳を飲んでも大丈夫かというと、離乳後に低下した小腸ラクターゼ活性が復活したということではありません。

給食などで牛乳を飲み続ける習慣があれば、乳糖を乳酸や酢酸に変えるような腸内細菌が増えるようになります。すると腸の中が酸性になるために、乳糖をガス発酵させるような腸内細菌が増えることができず、占有率が下がるためだと考えられています。

つまり牛乳を飲み続けることによっておならが出ないような腸内細菌叢になっていくというわけです。

また牛乳とともに固形食をとったり、牛乳を少し温めてから飲むと、おならや下痢などの症状が出にくいという人もいます。

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