一石英一郎さん(内科医)
一石英一郎(いちいし・えいいちろう)氏は、日々、内視鏡検査によってがん細胞の早期発見に努める内科医です。
日本では、本年度(2020年)から順次、小学、中学、高校でがん教育をすることが決まり、新学習指導要領に明記されることが決まりました。
一石氏は、少しでも多くの日本人にがんを正しく理解して欲しい。その思いから『親子で考える「がん」予習ノート』を上梓しました。
本稿では、作家エージェントでかつ自身も『花戦さ』などのヒット作品の著者でもある⻤塚忠さんが、一石さんに「正しいがんの理解の方法」を聞きました。
小学校ではじまる「がん」授業はなぜ必要なのか?
(鬼塚)一石先生、医師として、日々、内視鏡検査でお忙しいなか、ありがとうございます。2020年から全国のすべての小学校で「がん教育」が正式にスタートするそうですね。
(一石)そうです。しかも、がん教育は小学校だけでなく、2021年からは中学校で、2022年からは高校でもスタートします。すでに2020年度から実施される新学習指導要領に「がん教育」が明記されることになり、着々と準備が進んでいます。
(鬼塚)とは言うものの、小学生にがんを教えるのは賛否ありますよね。私の周囲にも、情緒的に未熟な小学生に、がんによる死の恐怖や不安を植え付けるような教育をしてはいけないという意見はあります。
(一石)そういう意見があるのは知っています。お気持ちはじゅうぶん理解できます。
ただ、現在、がんは日本人で最も多い死因です。罹患した当事者でなくても子どもに及ぼす影響も大きい。日本では毎年約100万人もの人に新たにがんが見つかり、30万人以上ががんで亡くなっています。
何らかのがんになる確率は日本人の男性で62%、女性で47%です。がんで亡くなる確率は男性25%、女性15%と推測されています。これは患者本人の数字ですが、患者を心配する家族や友人などを含めれば、がんは1億2000万人の全国民に関係する病といえるでしょう。
(鬼塚)こうして数字を列挙して語られると、説得に力がありますね。
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子どもたちが多感な時期に親は「がん年齢」を迎える