奈良時代のパンデミック…「大陸からの感染症」に次々と倒れた藤原氏一族
2020年03月17日 公開 2024年12月16日 更新
新型コロナウイルス禍が日本全体に大きな影響を及ぼし、世界各国でも感染者を急増させ、感染症の恐ろしさを示している。
医学の視点から、日本人の体質を踏まえた予防医療を考え続ける、医師で著述家の奥田昌子氏は著書『日本人の病気と食の歴史』にて、感染症に苦しめられる歴史はすでに縄文時代からあったことを示している。
本稿では同書より、日本で感染症が流行しそれにより政治に大きな影響を与えた歴史に触れた一節を紹介する。
※本稿は奥田昌子著『日本人の病気と食の歴史』(ベストセラーズ刊)より一部抜粋・編集したものです。
日本でも珍しくなかったマラリア
蘇我氏の本流を645年に打倒した中大兄皇子と中臣鎌足らは、大化の改新を押し進め、古代日本は大宝律令を柱とする法治国家に生まれ変わります。
701年に完成した大宝律令には、医疾令という医療制度が盛り込まれていました。
国として医師を養成し、全国に配置しようという画期的な制度でしたが、興味深いのは医師の専門分野です。
内科、外科、小児科、耳鼻科、眼科は当時もありました。これに加えて鍼灸(しんきゅう)と按摩(あんま)、このあたりはわかるとして、もう一つ、「呪術」があったのです。
朝廷の役人を治療する医師は10 人と定められており、そのうち2人が呪術の専門医でした。