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社会

「スムーズな検査」にも貢献 医療現場にAIの導入が期待される理由

三津村直貴、岡本将輝・杉野智啓〈TOKYO analytica〉(監修)

2020年04月04日 公開

 

どこでも素早く適切な医療が受けられる体制

画像診断におけるAIの躍進は目覚ましいものがあります。たとえば複数の角度から撮影したX線画像を組み合わせ、歯の全体像を把握できる「歯科パノラマX線画像」の診断速度は歯科医のおよそ6,000倍です。こうした診断AIと医師によるダブルチェックを導入すれば、見落としは大幅に減らせるといえるでしょう。

ほかにも、すばやく正確な診断が可能になることにはさまざまなメリットがあります。たとえば、医師の個人差によるあいまいな診断が減り、どこでも適切な医療が受けられるようになることです。

また、医療ミスも削減されます。厚生労働省の「医療安全推進総合対策」では、医療ミスの原因として「(中略)チーム内のルールが不十分であったり、十分な意思疎通がないために医療事故に発展することもある」という考察がなされています。

その点、医療機関で情報を連携する際、一部をAIに代替すれば、従来の「人から人へ」という情報伝達に比較して認識の齟齬は大きく減り、効果的なリスクヘッジとなるでしょう。

加えて、AIによる効率化の結果、人間の医師にしかできないことが浮き彫りになります。それは、患者の個を尊重したコミュニケーションです。AIによって下された診断を、より納得してもらうための平易かつ誠意のある説明などは、その最たるものといえます。

また、病院に来てもらうための適切な情報発信などにも、時間を割けるようになるでしょう。AIですばやく正確な診断ができることは、医師が患者に寄り添ううえでも重要な役割を果たすのです。

 

救急医療のスピード向上にも貢献

AIの躍進に加えて、医療機器の小型化やロボット手術の進歩も加速しています。こうした流れによって大きな恩恵を受けるのが、救急医療です。

現行の制度上、救急隊員は医者ではないため医療行為に制限があり、救急車に積める医療機器にも限りがあります。しかし、医療機器が小型化し、ネットワークにつながった高度な医療機器が救急車に積めるようになると状況が変わります。

たとえば、救急車が現場に着いたらまず患者の状態に応じてモバイル型の医療機器で状態を観察し、次に搬送作業を行いつつAIが搬送先を選定し、患者の情報を送ると共に搬送先の病院の医師に指示を仰ぐ、といった迅速な行動が可能になるのです。

患者が病院に着けば機械化されたストレッチャーが患者をスマート治療室に運び、治療室では患者の容態に応じて必要な検査をしつつ、医師が患者を直接目にする頃にはAIが適切な診断と治療法の提案を行い、場合によっては手術に必要な支援要員を招集しているかもしれません。

医師はAIによって提供された情報を吟味し手術を決断しますが、AIによる提案が適切なものであれば、治療室に着いた時点で最適な治療に必要な全ての用意ができており、すぐに治療が始められることでしょう。

現在の救急医療でも、ほとんどが人力であること以外はやるべきことはそれほど変わりません。しかし、技術の進歩により医療機器の活用範囲は広がっており、それぞれの現場で扱う情報はネットワークを通して一つに統合され、AIにより分析され、医療従事者は必要な情報を必要な時に得られるようになります。

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