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開発が進むオンライン診療…「本当に必要な人だけ病院に来る」世界が到来?

三津村直貴、岡本将輝・杉野智啓〈TOKYO analytica〉(監修)

2020年04月03日 公開

開発が進むオンライン診療…「本当に必要な人だけ病院に来る」世界が到来?

新型コロナウイルスをきっかけに、医療体制への注目が集まっている。再びこうした事態が起きた時、医療者への負荷をいかに軽減し、医療崩壊を防いでいくか。一体どのような体制を築いておくべきなのか。その行方を左右するのが、「AI医療」の進歩である。

在宅医療の普及により、人々が不必要に病院へ殺到することを防ぐことが期待できる。さらにオンラインによる遠隔(リモート)診療が広がることで、医療機関の充実していない地域からでも高度な医療にアクセスすることも可能になる。こうした体制の整備は、次のパンデミックに備える上でもカギになることは間違いない。

『60分でわかる! AI医療&ヘルスケア 最前線』〔三津村直貴 著、岡本将輝・杉野智啓(TOKYO analytica) 監修〕は、AIの活用によって医療がいかに変わっていくのかを解説した1冊である。本稿では同書より、在宅医療や遠隔医療を支える技術の進歩、その先にある未来像について書かれた一節を紹介する。

※本稿は三津村直貴 著、岡本将輝・杉野智啓(TOKYO analytica) 監修『60分でわかる! AI医療&ヘルスケア 最前線』(技術評論社)より一部抜粋・編集したものです。

 

常に健康状態を管理、医療ともつながる

AIは私達が普段持ち歩く身近な電子機器にも実装されており、健康に果たす役割も無視できなくなっています。代表的なものはスマートフォンでしょう。

AIに自分の身体情報や疾患の諸症状を入力することで健康状態を確かめられるアプリがすでに登場しています。また、アプリを介して医療機器や医師とつながり、自分で撮影した写真などをもとに問診を受けられる遠隔診療も可能になりました。

そのほかにも、時計・衣服・メガネ・アクセサリーなど、常に体に触れているモノをインターネットに接続(IoT化)することで、体温・血圧・脈拍など人の健康状態を常に把握できるようなウェアラブルデバイスが登場しています。さらに、そこにAIを組み込むことで疾患の早期検知などが可能になってきました。

このように、AIはただ健康状態を把握するだけに留まりません。食生活や運動状態などもデータ化することで、ユーザーごとに適切な食事や運動の提案を行い、異常の兆候があれば深刻化する前に医療機関の受診を推奨してくれるのです。

また、あらかじめ年齢や緊急連絡先を設定しておくことで、検知した病状によっては自動でタクシーや救急車を呼んでくれたり、家族への連絡も代行したりしてくれます。これは高齢化社会において非常に重要な機能です。これらの利点は、外で遊んでいる小さな子どもにも応用できます。

AIを上手く活用することで、子どもから高齢者を含むあらゆる世代の人々が安心して暮らせるようになるのです。

 

在宅医療の充実で、「本当に病院に来る必要がある人」にリソースを投下できる

ウェアラブル機器やスマホの発達により、在宅医療の質も急速に向上しています。特に、こうした在宅医療は何度か通院した患者や入院経験のある患者に有効で、症状が比較的安定している慢性期や、自宅での最期を希望する終末期などであれば、通院や入院ではなく、在宅診療が適するケースが増えているのです。

同様のケースは、問診よりも行動監視が重要な認知症などにおいても見られます。AIが状態を監視し、異変が生じればネットワークを通じて病院に通知され、病室に看護師が向かうのと同じように、自宅や入居施設へ救急車やドクターカーが手配される仕組みです。場所が自宅か病院かという違いだけで、それほど大きな違いはありません。

こうした在宅医療のシステムは医師のいない介護施設などでは特に有益で、芙蓉グループと長崎大学が共同研究を進めている「安診ネット」では、介護施設などで生活する患者の状態をデータベースで共有し、医師や看護師が状態をチェックし、介護施設にアドバイスを行うことで健康状態の管理を行っています。こうしたシステムは訪問介護にも応用が可能であり、自宅で安全に介護を行うこともできるようになるでしょう。

何より、在宅医療の充実は「本当に病院に来る必要がある患者」に対してより迅速な診断が可能になることを意味します。限りある医療リソースを効率的に使用しなければならない現在、在宅医療はその点においても大きな役割を期待されているのです。

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オンライン診療とAIの連携で、診療の質と地域格差が解消

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