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「会社のため」と密告をくり返す人…“嫉妬属”が社内に生まれる悲しい事情

石川幹人(明治大学教授)

2020年05月29日 公開 2022年06月02日 更新

 

もし自分が「嫉妬属」だったら

嫉妬属は、昔と今では環境が変わっていることを認識して、嫉妬の感情を抑制するクセをつけるよう努力しましょう。「人にわたってしまった利得はとり返せない」とあきらめ、気持ちを切り替えて、次の利得を狙いましょう。

あなたにライバルがいて、そのライバルに嫉妬を感じているならば、棲み分け作戦が有効です。ライバルと同じ道を歩もうとするから、嫉妬を感じやすいのです。

ライバルにない自分らしさを見つけ、その方向に歩むようにしましょう。ライバルがうまくやっていることがほほ笑ましく感じられたら、嫉妬属は卒業です。ライバルはきっと有能な人なので、競争よりも協力して仕事を進めるほうがいいでしょう。

 

「報酬の分け方」が「嫉妬属」を生む要因に?

嫉妬の感情が生じるタイミングは、所属する集団に存在する利益を分けるときです。具体的には、成功報酬を一律に与えるか、成功への寄与を査定して比例配分するかが大きい問題です。

比例配分のほうがいいように感じるかもしれませんが、嫉妬の原因になります。人間は自分の寄与を大きく見積もりがちなので、査定が低いという不満が生じやすいのです。

そう考えると、成功報酬の一律等分という方法にも利点が見えます。この方法は、アメリカのベンチャー起業時によくとられています。いっしょに起業に尽力した仲間は、成功したときには等しく利益を得るかわりに、成功するまでは等しくがんばって仕事に寄与(コミット)するという精神です。これには「皆とともにがんばれなくなった(コミットできなくなった)人は去って行く」という含みがあります。

日本の企業で成功報酬の一律等分をすると、こんどはタダ乗り問題が生じます。チームにほとんど寄与しないまま、チームに居残って、成功報酬をあてにする人が現れるのです。

これは、メンバー編成がトップダウンで決められてしまい、チームに寄与しないメンバーを現場で排斥できないという、制度上の問題です。やはり日本の組織では、嫉妬属の問題に配慮しながら、若干の比例配分を模索するのがいいでしょう。

余談になりますが、成功した仕事の利益は、可能な限りすべて、配分したり投資したりするのがいいです。企業で内部留保すると、社内の協力を損なう恐れがあるからです。内部資金をとり合って企業内で競争が生じると、新規の利益をあげる協力がおろそかになりやすいのです。

 

「嫉妬」と切り離せない「格差」の問題

現代の資本主義社会では、収入や保有資産の格差が問題になっています。そもそも、資本主義の「資本が利益を生む構造」が、格差を拡大する性質をもっているのです。この格差に対する嫉妬属の増加は、無視できない問題です。社会の暴動や不安定化の源になります。

お金を稼いだ人は、「個人の努力や能力によって得た妥当な報酬である」と格差を正当化するでしょう。しかしそれは、たまたま社会環境にふさわしい能力や元手を持っていただけの「運」という解釈もできます。過剰な格差を是正する、富の再分配の仕組みを早急に導入する必要がありそうです。

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