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「いつもマウントをとりたがる人」が恐怖しているものの“正体”



2020年06月01日 公開

石川幹人(明治大学教授)

なぜマウントを取りたがるのか?

「でも、〇〇って、実際は大したことないですよね。自分もやってたのでわかります」…評価されている人を脇に自慢話を始め、さりげなく自分が上であることを見せつけるようなふるまいをする。自慢話がエスカレートし、けんか腰になることも。この厄介な“マウントを取りたがる人”たちとどう付き合えばいいのか?

進化心理学、認知行動論の第一人者である明治大学の石川幹人教授は、新著『職場のざんねんな人図鑑〜やっかいなあの人の行動には、理由があった! 』にて、進化心理学・認知行動論の視点から、仕事でつきあう人の生態を25通りに体系化し、そのふるまいの謎を解き明かしている。

本稿では同書より、自分を上げ、他人を下げようとする「マウント属」の生態、彼らとのつきあい方について解説した一節を紹介する。

※本稿は石川幹人著『職場のざんねんな人図鑑〜やっかいなあの人の行動には、理由があった! 』(技術評論社)より一部抜粋・編集したものです。

 

公平さを装うも、「認められたい」気持ちがバレバレ

「〇〇さんって、いい大学出身だよね、私も〇〇は出てるけど」
「でも、〇〇って、実際は大したことないですよね。自分もやってたのでわかります」

職場でだれかが褒められている際に、こんな風に自分の話をし始めます。人の話尻に乗っているように見えて、さりげなく自分の自慢話になっているのが特徴です。

露骨な対立ムードではありませんが、話題になっている人物より自分が上であることのアピールに余念がありません。人のアイデアに乗ったり協力したりせずに、自分のほうを振り向かせようと、あの手この手を尽くします。

思ったような評価がまわりから得られないと、機嫌を悪くしたり、いつまでも人に突っかかったような話をしてくることも。上司の場合、精神的な慰めを部下に求めてきたりします。手を貸してくれる時もぶつくさ文句を言い、相手が失敗すれば嬉々として周囲に言いふらす側面も持ち合わせています。

また、自分のほうが上だとは主張せず、他人の行為の価値を否定し、無効化しようとするタイプも。

「でも、あんまり意味ないんじゃない?」
「大したことないって聞いたよ」

などの発言で、相手の今いる場所から引きずり落とそうとしてきます。公平な目線を気どりつつも、実際には狭い知識と感情論が勝っているので、本人は隠しているつもりでも、周囲には悪意がバレバレだったりします。

 

「底辺への恐怖」がマウント属を生むことも

マウント属は、他人を支配することで自分の立場をよくしようとする戦略をとっています。チンパンジーのような上昇志向のあらわれです。

チンパンジーの群れは、ボスを頂点にした階層集団です。食料の獲得も配偶者の選択も、上位の個体が優先されます。上の命令に下が従うのが基本です。その仕組みは、敵が襲ってきたときに首尾よく反撃するなど、素早い対応が必要なときには功を奏します。しかし一方、上下関係を決定するためのもめごとが集団内で始終起きる問題が発生します。ボス争いに至っては熾烈をきわめる戦いになり、有能な個体が失われるなどの損失も大きいです。

迅速な意思決定が必要となる企業も、こうした階層を取り入れています。部課長の制度がそれにあたります。職場で殴り合いの戦いが起きることはまずありませんが、昇進をめぐった上下関係の探りあいや見せつけあいは、しばしば起こっているでしょう。それに積極的な人がマウント属なのです。

昇進をめぐる争いというと階層の上のほうで起きることと思われがちですが、底辺でも起きます。最下層の確認をするためです。階層の末端にいるチンパンジーは、いつも「おこぼれちょうだい」の身分で、食料不足になればまっさきに餓死してしまいます。末端にいることの危険性は大きいのです。人間社会で死に直面することはあまりありませんが、それでも末端にいることの不安は少なくないでしょう。

そこで人間も、自分よりも下の人間を作ることで精神的安定を求めるのです。マウントで上位を表現し、それが受け入れられたら「自分は底辺ではない」という安心が湧き上がってくるのです。これが高じて暴力が伴うと、"いじめ"になります。

職場に上下関係が必要だとしても、深刻な状態にならない、弱い上下関係にすべきでしょう。

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