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社会

「いつもマウントをとりたがる人」が恐怖しているものの“正体”

石川幹人(明治大学教授)

2020年06月01日 公開 2024年12月16日 更新

 

上昇志向が発生する原因は何か

自分がマウント属と疑われたら、自分に上昇志向や底辺への恐怖が隠れていないかを自問してみましょう。たとえば部課長になるととても待遇がよく、職場でそれに向けた競争が起きているのならば、上昇志向があるのは当然です。

それはあなたのせいではなく、職場の環境がそうさせているのです。また、実績が上がらない社員は退社に追い込まれる職場ならば、底辺への恐怖を感じるのはあたりまえです。「上から目線」を批判されるいわれはありません。

そうした理由もなく、上昇志向や底辺への恐怖が感じられるのならば、チンパンジーのような古い時代の感情が出現している可能性があります。意識的に他者を賞賛する発言を優先し、上から目線の態度をとらないように努力しましょう。

自分では上から目線の態度とは思えないのに、マウントと思われる場合もあります。単にビジネス上の議論をしているだけ、親切で教えてあげているだけなのにマウントと言われる場合には、自分が「議論属」や「おせっかい属」である可能性も考えてみましょう。

それでも問題が見当たらないならば、マウントと指摘する人の過剰反応と考え、放っておきましょう。

 

「競争」から「協調」の空気に変える

前述したように、マウントが目につく職場は、上から目線を引き出しやすい環境にあることが多いのです。競争が行き過ぎている職場ならば、競争から協調に変える運動をしてみましょう。

一方、マウントされることが気になるという人は、劣等感を抱えている可能性があります。人にはそれぞれ強みや弱みがあるので、弱いところは強い人に教えを乞うたり助けてもらったりすればいいのです。劣等感を、学習意欲や協調の精神に転換していきましょう。

マウントが激しい人については、ある程度の態度改善を促すのがいいでしょう。本人の自覚が期待できないとやっかいですが、そこに悪気がない場合は割り切って、周囲で「そういう人なんだな」と思って暖かく見守るしかないです。

 

「行き過ぎた上下関係」は時代遅れになっていく

上下関係の意識は、平均して男性に大きいことが知られています。集団での狩猟に上下関係にもとづいた統率が必要だったから、狩猟に従事していた男性にそうした意識が芽生えるよう、男性ホルモンが働いているのです。

文明社会になっても、集団間の戦いやビジネスの競争に同様の統率が必要とされ、上下関係は今日まで強く維持されてきました。そのため、職場が上下関係の意識が強い人(男性ホルモンの強い人)が活躍しやすい場になる傾向があります。それが、多くの職場から女性を遠ざける要因のひとつにもなっています。

職場における上下関係の意義は薄らいでいます。上下関係を「機動的な意思決定のための便法」と限定して考え、上に立つ人の権力や利益を過大にしない対策が必要です。融和的雰囲気の職場が形成され、上下関係を意識しない女性も快適に働ければ、女性の社会進出もますます促進されるでしょう。

アメリカでは、上司と部下はファーストネームで呼び合うフランクな関係になることが奨励されています。そこには、上下関係は仕事を効率的に進めるときの工夫にすぎないという視点があります。終業後も上司に敬語を使い、飲み会に行ってもお酒をつぐべきとされる日本の文化は、現代的な社会への変化をさまたげています。

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