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終業後にチャットが…テレワークの「時間外労働」に手当を払うべきか? 法律の見解は?

寺島有紀(社会保険労務士)

2020年07月08日 公開 2022年07月14日 更新

 

テレワーク導入時にポイントとなる「事業場外みなし労働時間制」とは?

また、裁量労働制とフレックスタイム制度に加え、テレワークとセットで語られることの多いものとして、「事業場外みなし労働時間制」というものがあります。

事業場外みなし労働時間制とは、(1)労働者が業務を事業場外で従事し、(2)会社の指揮監督が及ばないために労働時間の算定が困難な場合に、(3)その事業場外労働については「あらかじめ決めた労働時間(通常所定労働時間)」を労働したとみなすことのできる制度です。

テレワークはこの「労働者が業務を事業場外で従事し」というところに当てはまるため、テレワークの導入の際に、この事業場外みなし労働時間制を活用すれば、従業員の労働時間は特に管理せず、必ず所定労働時間の8時間労働したとみなせばいいということになるのでは、と考える企業も多いようです。

ただ、テレワーク時にこの事業場外みなし労働時間制を適用するには一定の要件があります。具体的には次の3点を満たす必要があります(厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」)。

【1】テレワークが、日々私生活を営む自宅で行われること
【2】使用するパソコン等の通信機器が自分の意思で、通信可能な状態(会社・上長から随時具体的な指示を行う事ができる状態かつ、それに従業員が即応しなければならない状態)を切断することが会社から認められていること
【3】テレワークが、随時会社・上長の具体的な指示に基づいて行われていないこと

それぞれの要件を見ていくと、【1】に関しては、在宅勤務であれば、あてはまります。

では、【2】はどうでしょうか。【2】については、なかなか確実に満たせるという企業はないように考えています。つまり、通常テレワークを行う従業員に対し、「勝手にパソコンをオフラインにしてメールやチャットツールに応答しないこともOK。電話にも出なくてよい」といったことまで許容する企業はなかなかないのではないでしょうか。

また、【3】についてもテレワーク時にも急遽お願いしたい業務などを依頼することもあるでしょうし、通常のオフィス勤務と同様、会社・上長の指揮命令に基づき業務を遂行する場合が多いと考えられます。

いつでもオフラインにすることができ、具体的な指揮命令を受けず自分の裁量で業務を進めるという条件が確保できているのであれば、事業場外みなし労働時間制を適用することもできるかもしれません。

ただ、テレワークをめぐる各種オンラインミーティングツールやコミュニケーションツールが発展している現在、事業場外みなし労働時間制を適用できる場面というのはなかなか限られてきているものと考えられます。

少なくとも、「テレワークであれば、事業場外みなし労働時間制が自動的に使える」というのは大きな誤解です。

もし、事業場外みなし労働時間制の適用が否定された場合、追加の未払い賃金を支払う必要がでてしまう等、企業にとって少なくないダメージを与えることになります。

テレワークの導入に合わせて、新しい労働時間制度を導入するということよりは、まずは今まで通りの労働時間制度を活用し、時間管理を行っていくということが、現場の混乱も招かずスムーズなテレワーク導入につながるでしょう。

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テレワーク勤務時の「時間外労働」「休日労働」はどう管理する?

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