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アメリカの資産家が冷静に考えた「銀行の利用価値」

アンドリュー・O・スミス (著), 桜田直美 (訳)

2020年07月21日 公開 2023年01月11日 更新

アンドリュー・O・スミス

手数料の払いすぎを防ぐには?

銀行もビジネスなので、サービスを提供して料金を受け取っている。とはいえ、もし銀行の収入源が手数料だけだったら、儲かるビジネスモデルとは言えないだろう。

銀行は、顧客から預かったお金で主にふたつのことを行っている。ひとつは、顧客のお金を管理するということ。顧客が現金を必要になったら引き出しに応じ、また口座引落などの支払いサービスも行う。

そしてもうひとつは、顧客から預かったお金を事業に貸し出すという仕事だ。

この貸し出したお金の利息も銀行の収入源になっている。そして、この貸し出し事業に必要なのが、顧客が預けるお金だ。

たいていの人は、一度どこかの銀行に口座を開くと、ずっとその銀行を使い続けることになる。だから銀行側は、忠実な顧客の預金をあてにして貸し出しを行っているのだ。

とはいえ、手数料も銀行にとって貴重な収入源になっている。消費者であるあなたは、銀行の思惑をきちんと理解して、手数料を払いすぎないように注意しなければならない。

 

銀行にお金を預ければ安全か

かつてアメリカで発生した大恐慌の主なきっかけのひとつは、いわゆる「取り付け騒ぎ」だ。

取り付け騒ぎとは、銀行が危ないという噂が広がり、あわてた預金者が銀行に殺到して預金を引き出そうとすることをいう。

銀行はすべての預金の引き出しに対応するだけの現金を持っていないので、いずれ引き出しに応じられなくなる。  そこで銀行は、現金を手に入れるために、お金を貸している相手に返済を迫るのだが、たいていの場合、相手は返すことができない。

この悪循環で社会に不安が広がり、経済が縮小し、銀行セクターが大混乱に陥ることになる。

アメリカで取り付け騒ぎが起こったのは大恐慌のときが最初ではないが、おそらく史上最悪のレベルではあっただろう。金融システムへの信用が失墜すると、金融恐慌と呼ばれる状態になる。

金融恐慌が起こるのは、銀行がすべての引き出しに耐えうるだけの現金を普段から保有していないからだ。実際、銀行が持っている現金(これを「準備金」と呼ぶ)は、預金全額のほんの一部でしかない。銀行は顧客から預かったお金の大半を、事業への融資や住宅ローンの貸し出しに使っている。

クリスマスの時期になるとよく放送される名作映画『素晴らしき哉、人生!』でも、ジェームズ・ステュアート演じるジョージ・ベイリーが、預金を引き出そうと銀行に殺到した人々に向かって、預かったお金は地域の人たちのための住宅ローンや事業のために貸し出したのでここにはないと説明するシーンがある。

現在でも状況は大恐慌の時代と同じで、銀行はすべての預金の引き出しにすぐに応じることはできない。しかし、あの時代と違い、今の銀行には預金保険がある。だから顧客は、たとえ銀行が危なくなっても、あわてて預金を引き出す必要がない。

もちろん、これで金融システムへの信用が盤石になったというわけではないが、少なくとも取り付け騒ぎのリスクは完全に消えたと言っていい。

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