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「すぐ反論してくる人」を封じ込めるための“頭の使い方”

小早川鳳明(企業再建プロフェッショナル)

2020年09月03日 公開

 

重要な論点の漏れをなくす

私が携わる企業買収の世界では、抜けもれなく物事を考えておけば、会社を買収した後に、想定していなかったトラブルの発生を回避することができます。

例えば、会社買収時には、会計・法務・ビジネス・IT・環境・不動産など、買収する会社に関わるありとあらゆる分野のリスクの有無を確認し、問題が発生する可能性が少しでもある場合にはそのときの対処方法や、損害の責任を誰が負うのかを契約書に書き込みます。

しかし、買収をする予定の会社のリストを洗い出す際に、「抜けもれ」が発生していると重大な損失を生んでしまうことになります。

いくつか例を挙げます。買収される会社が利用しているITシステムの事前確認をもらしてしまうと、買収日当日に、システムが停止して事業を継続できなくなります。また、環境分野の状況確認を怠れば、買収後、買収した会社の地下から土壌汚染が発見され、その浄化に何十億円もの費用を負担しなければならなくなります。

あるいは、不動産の登記の確認を忘れると、買収した会社が所有する土地だと思っていた場所が実はそうではなかったことが後日判明し、その土地の本当の所有者から多額の土地利用料の請求を受けることになります。

会社の方針を考え、事業計画を作るコンサルタントも同様です。重要な競合の動きを見逃したり、考慮すべき顧客セグメントを考慮しなかったりすると、大きな損失につながります。

このように ビジネスの世界において、本来は考えておかなければならないことや注意しておかなければいけなかったことをもらしてしまうということは、将来、多大な損失を生むことにつながります。だからこそ、大企業の重大な経営決定に携わるコンサルタントは、「抜けもれなく」考えるMECEの思考法をとても大事にします。

 

見えていなかったことを新しく発見するために

具体的な方法は、『秒速で人が動く 数字活用術』(PHP研究所)で詳しく触れていますが、実践にどのようなビジネスシーンでMECEを利用できるのか、ご紹介しましょう。

例えば、自動車メーカーにて、マーケティング戦略を見直したいと考えているとします。年配の部長らは、競合の大手自動車メーカーであるトヨタ・ホンダ・日産などを意識して検討すべきだと言っていたとします。

MECEに考えるということを忘れて、言われた通りに仕事をするだけだと、これら老舗の自動車メーカーを意識した戦略見直しを行うことでしょう。

しかし、先に「本業(売上高の過半を占める事業)が自動車製造」と「本業が自動車製造ではない企業」と枠組みを考えた上で、競合企業を考え直せば、近年電気自動車や自動運転に参入してきた、GoogleやUberなども競合として含めたうえで戦略を検討しなければならないと気づくことができるのです。

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