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社会

ついに「若返り」が可能な時代に? テクノロジーが生み出す“寿命を選択できる世界”

大賀康史(フライヤーCEO)

2020年10月07日 公開 2022年01月13日 更新

 

私たちは年齢を選択できる世界の入り口に立っている

本書では老化を促す研究についても成果が語られています。それらを組み合わせるとちょっとSF小説のような世界が見えてきます。

それは、未来のどこかで年齢を選択できるようになるという世界です。偶然の死は避けられないので、不老不死とまでは言えません。しかし、一面では不老不死を超える力を手にする可能性があります。つまり、意のままに年齢を上下させられるということです。

俳優であれば求められる役に合った年齢を選択するでしょう。アイドルであれば、10代から20代の年齢を維持するかもしれません。教育者や研究者だとしたら威厳のある50代を選択する人もいるでしょう。結婚に失敗したと感じた人は、一度若返って再度違う人と結婚生活を仕切りなおすこともできるでしょう。

既にマウスで検証されている研究成果を人類に適用できるのだとすると、このような世界は論理的には矛盾がなく、現実になる可能性を十分に秘めています。異次元の世界の話に聞こえて、急には腹落ちしないかもしれません。でもそれを今信じられるかどうかに関わらず、研究は進み、私たちは一つ一つ驚くべきテクノロジーを人類のものにしていくでしょう。

 

未来の世代という概念がなくなる

若返りや長寿化に限界があると想定して、平均寿命が仮に150歳になった世界を想像してみましょう。今40歳であれば、あと110年生きる計算です。その場合、多くの人は長期的な視点を自然と持てるようになるはずです。100年後の世界は私たちの子供たちのためではなく、私たち自身のためになるからです。

100年後の人類のために研究をすることも活発になるでしょうし、人口の増加にともなう食糧問題にも自分ごととして取り組まなければならなくなります。気候変動も自分たちが未来に直面する現象となるため、対策を急がなければなりません。沿岸地域に住む人は、温暖化により自分の代で住み家が水没してしまわないように、周りに働きかけることでしょう。

地球規模の課題に対処することも、未来の世代に美しい地球を残すという道徳的な行為ではなく、将来の自分にとって利益となる合理的な行動になるのです。

 

今の時代を生きる人が学ぶべきこと

ここで手に入れるのはタイムマシンではないので、一度してしまったことはやり直せませんし、時計の針は巻き戻せません。しかし、年齢は巻き戻せるかもしれず、少なくとも健康寿命は伸ばせる、という期待を持つことは自然でしょう。

だとすると、私たちはキャリアプランを一から考え直さなくてはなりません。大学時代の勉強よりも、社会に出てからの努力の方が、期間として数十倍の長さになるかもしれません。また、社会に出てからの毎日の努力の差が100年以上積み重なった時には、自己投資をする習慣の有無がキャリアの優劣を決定的に隔てることになるでしょう。

学び直しのための教育機関はもっと繁栄することが予想されます。個人の職業選択は、その時点の金銭的な報酬よりも、そこで実現する成長こそが重要な要素になるでしょう。

と、ここまで書いて気付いたのですが、期間の長短はどうあれ、これらは今までも言われていることですね。人生100年時代ではなく、何年時代になるのかはまだわかりません。

人生100年時代に求められる行動は、150年時代になったらより重要になるというだけです。科学が進歩したら考えようではなく、今から行動を改めて、来るべき長寿社会に備えても損はなさそうです。

著者紹介

フライヤー(flier)

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