なぜ企業の「生産性」は上がらないのか…“生産性=効率化” という誤った認識
2020年12月21日 公開 2024年12月16日 更新
新型コロナウイルスが世界を大きく変え、私たちの生活を変え、職場での働き方も変えた。
この大きな変化は企業における「人材マネジメント」のあり方に多⼤な影響を及ぼしている。社員やメンバーをどうモチベートし、育成し、企業活動を力強く円滑に導くのか…。激変する環境の中で頭を悩ませている⼈は多いだろう。
企業と社員、組織と⼈を取り巻く環境は大きな変化の途上にあり、誰にも正解がわかる状況ではない。まさに企業の経営者も⼈事部も、そこで働く社員もみな、手探りしながら考えている、という状況だ。
⼈材マネジメントの新しい潮流をふまえて解説した『この1冊ですべてわかる人材マネジメントの基本』より、職場の生産性について触れた一節を紹介する。
※本稿は、『この1冊ですべてわかる人材マネジメントの基本』(日本実業出版社刊)の内容を抜粋・編集したものです。
生産性には「アウトプット」「インプット」が肝心
(図「生産性の定義」)
近年、働き方改革の流れもあり、「生産性の向上」が日本企業においても叫ばれるようになってきました。この「生産性」という言葉を聞くと、残業時間の削減や、AIによる既存業務の効率化など、「いかにして業務時間を削減しつつ、今の品質レベルを維持するか」という発想を持ってしまう人が多いようです。
本来の生産性は、「生み出されたアウトプットに対して、どのくらいのインプットを使用したか」という概念であり、数式で表すなら上の図のようになります。
確かに、インプット(この中に労働時間も含まれる)を少なくすることも一つの生産性向上の方法ではありますが、企業活動においてはそれだけにとらわれない、幅広い取り組みが求められます。
本項では、生産性の構成要素である「アウトプット」と「インプット」の2つに分けて、生産性向上のアプローチを考えていきます。
〈アウトプットを極大化1〉商品・サービスの「本源的価値」と「付加価値」をつくる
まずは、分子である「アウトプット」について、生産性向上に向けたアプローチを考えていきます(もし、直接顧客と接する機会がなければ、以降の顧客の部分を自分の組織が価値を提供する相手、例えば営業部隊や経営層など、と置き換えて考えてみてください)。
アウトプット(分かりやすい指標としては売上や収益額など)を高めていくためには、市場における顧客からの評価を改善していかなければなりません。そのためには商品・サービスの持つ価値を高める必要があります。この価値には商品・サービスの本来の用途に伴う「本源的価値」と、そこから付帯的に発生する「付加価値」の2種類があります。
これらの価値へのアプローチとしては、顧客が求める要求(ニーズ)にしっかりと応えつつ、それに加えて顧客の潜在的な「欲求(ウオンツ)」をとらえ、それを充足する新たな商品・サービスを提供することが必要不可欠です。
欲求(ウォンツ)を具現化していくためには、顧客の行動を客観的に粘り強く観察し、その行動パターンから顧客がまだ気づいていない問題を解決する商品・サービスを生み出す、という方法があります。
生産性向上のためには、日々の忙しい業務の中にもこういった新しい価値創造のための時間を確保しておくことが重要です。