日本には、自己犠牲を美徳とする「頑張る教」信者が多いと言うのは、人気心理カウンセラーの心屋仁之助氏だ。
周りのために頑張るのは悪いことではないが、頼りたいのに人に頼れず、その結果、「私一人だけが頑張っている」という被害妄想、さらに、周囲にも同じ努力やガマンを求めイライラのスパイラルに陥る、と心屋氏は指摘する。このスパイラルから抜け出す「ずるい生き方」について聞いた。
※本稿は『心屋仁之助のずるい生き方』(かんき出版)より一部抜粋・編集したものです。
努力も苦労もガマンも、すぐに裏切る
僕はずっと、
「がんばらないで」
「怠けよう、サボろう」
「好きなこと“だけ”をやろう」
「イヤなことはやめよう」
というメッセージを送り続けてきました。
これは、つまり「大事じゃない(不要不急な)ことはやめよう」というメッセージ。新型コロナウイルスの影響で、不要不急のこと、やらなくていい仕事、行かなくていい職場、会わなくていい人などが浮き彫りになった今、このメッセージはますます重要性を増しています。
努力や苦労、ガマンをするのが美徳だという感覚は、日本人特有のものかもしれません。「寝てない自慢」や「病気自慢」も、やはり苦労を美徳とする精神から来ていると思います。
オリンピック選手が金メダルを取ったときも、ケガを乗り越えて…と言われたら、みんな感動しますよね。楽勝でなんとなく金メダル取っちゃいました〜って言われたくないでしょう。
「それだけ苦労しているんなら、成功しても許しましょう」
という謎の上から目線でみんな見ている。
映画でも、敵や挫折、逆境を経て大逆転。というのがヒーローものの定番でしょう。山が険しければ険しいほど心躍るアルピニストの心なんです。
でも、あえて言いますが、苦労して辛い目に遭って頑張った人だけが成功するというストーリーはもう都市伝説だと思ってください。
努力も苦労も、すぐに裏切ります。もしも努力して苦労してそれが必ず報われるのであれば、高校野球、全部の学校が甲子園で優勝することになります。
「苦労しないと成功できない」もしくは「ラクして成功しちゃいけない」と思っている人がたくさんいる中で、現実には、そんな苦行をせずに成功していく人もいっぱいいるわけです。
少しサボる、ではなく徹底的にサボる
僕が、
「あまりがんばらなくていいんですよ」
と言うと、
「でも頑張らないといっても、サボってはいけないですよね」
って聞かれるのですが、違います。
徹底的に、サボるんです。
サボって、サボって、もっとサボって、こんなにサボっていいんだろうかというくらいサボってください。そして、周りの人から「アイツだけずるい! アイツのせいで迷惑をこうむってる」と思われるくらいなのが、ちょうどいい。
この記事を読んでくれる人は「真面目で」「ずるくなくて」「ちゃんとした人」でしょうから。そういう人の「サボる」や「迷惑をかける」なんてネコパンチ程度なのですから。
僕はあるときから、頑張るのをやめました。ちゃんとすることも、人に迷惑かけないようにすることもやめました。そして、いろんなことを人に丸投げするようにしました。
講演の準備も、集客も、全部やめた。
やってくれるという人を探し出して、自分でできることでもまるっとお願いするようにしました。僕が言う「ずるい生き方」とは、この徹底して人に頼る生き方のことを指します。
そんなことをしたら人に嫌われるんじゃないか、迷惑なんじゃないか!? かわいそうじゃないか! って思います?でも逆なんですよ。自分でなんでもできる。人に迷惑をかけない。
そう思ってやってしまう人は、実は人に、
「お前は役に立たない」
「お前よりも自分のほうがすごいんだ」
と言っているようなものです。実は他人の力を信用していない水くさい人。言ってみれば周りの人のやる気を奪っている状態なのです。ひとりで頑張っているから結局、いろいろうまくいかない。
勝手にひとりになって他人のことを信用しないで、あとで助けてもらえない、と文句を言う。そっちのほうが迷惑です。でも、自分がどうしてうまくいかないかがわからないから、もっと頑張ろうとする。