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「うちの子に限って遺産で揉めることはない」の思い込みが招く“醜い争い”



2020年12月01日 公開

長谷川裕雅(弁護士・税理士)

遺言書の必要性

現在放送中の話題のドラマ「危険なビーナス」(TBS系列)で注目を浴びている「相続問題」。長く生きていれば、誰にでも必ずぶつかる問題だが、「相続のことは複雑でよくわからない」が、多くの人の本音ではないだろうか?

しかし、今日からすぐにでも簡単に取りかかれるのが「遺言書」の作成だ。これがいかに大切な家族を守ることになるか、遺言の基礎知識を交えながら、東京永田町法律事務所の代表を務める著者(弁護士・税理士)が解説する。

 

※本稿は、長谷川裕雅著『磯野家の相続[令和版]』(PHP文庫)の内容を一部抜粋・編集したものです。

 

身内の人たちが良い関係性であっても、“相続争い”は起こる

「遺言」とは、故人の意思を整理し、それらを相続人に言い残すことです。遺言書を作成する本人だけではなく、将来、遺産を相続する人たちにとっても、非常に重要な役割を担います。

しかし、誰だって自分の死後を考えるのは気がすすまないものです。それに加えて「自分の家族は大丈夫」という気持ちが働くのでしょう。

「私の死後、相続人である子供たちが、遺産分割でもめることはないと思います。ですから、遺言をわざわざ残す必要がないと考えているのですが……」

「多額の遺産があるならまだしも、私が残せる財産といったらほんのわずか。もめるまでもないと思うのですが……」

このようにおっしゃる人が意外に多いのです。
果たして、本当にそうでしょうか。

たとえわずかな財産であっても、相続する側からすると「もらえるものなら、少しでも多くもらいたい」という心理が働くはずです。どんなに子供たちの仲が良くても、相続時の状況はわかりません。

そのとき、お金に困っている状況で、目の前に無償で手に入る財産があれば、相続争いに発展する可能性は非常に高いのです。

さらに、「第三者の思惑」も関わってくるでしょう。

たとえば相続人間で「両親の面倒をみていた兄さんに譲るよ」と納得しても、相続人の夫や妻が「そんなバカな話があるか!」と怒鳴り込んでくるケースが多々あります。

「相続人を信じたい」「自分の家族はなんとかうまくやってくれるはずだ」という気持ちはわかります。しかし、そうした想いがすべての相続人に、必ずしも届くとは限りません。

遺言という形で、自分の意思を文書で整理し、伝えることで、相続人間の無用なトラブルを避けられます。「今、遺言なんて必要がない」と考えている人も、検討してみる価値は十分にあるはずです。

 

相続人以外の人にも財産を残したいのなら……

遺言を残すことで、被相続人は「誰に」「何を相続させたいか」といった自分の意思を伝えることができます。もちろん、遺留分を侵害しない範囲においてのみ確実に有効となりますが、遺言によって実現できることは意外にたくさんあるのです。

たとえば「この土地と建物は長男にあげたい」「この大切な宝石は長女に持っていて欲しい」というように、相続させる財産の指定ができます。自分の世話をしてくれた次男に、長男より多くの財産を残すように指定することも可能です。

さらに、相続人以外にも財産を残せます。事実婚の状態にあるパートナー、介護などで世話になっている長男のお嫁さんなどは相続人にあたりませんが、財産の一部を残したいと考えるのであれば、遺言によって実現することができるのです。

対照的に、遺言がなければ、相続人全員が集まり、法定相続分に従って、どの財産を誰が相続するかを話し合いで決めることになります。相続人のなかには「寄与分」を求めてくる人もいるでしょうし、具体的な分割の方法がまとまらないこともよくあります。

話し合いがまとまらず、調停や審判で遺産分割を行うことになれば、時間も労力も長期にわたってかかります。精神的な負担は大きいものになるでしょう。相続人間の関係が悪くなったり、疎遠になったりすることも考えられます。

遺言を残すことは、遺産分割に関かかわるこうした様々なトラブルを回避するうえで重要なのです。

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