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社会

「クレジットカード、半導体も…」GAFAが狙う次のターゲットは?

山本康正(ベンチャーキャピタリスト)

2020年12月16日 公開

 

アップルは人の五感すべてを狙っている

中でも最近注力しているのが、人の五感に関するデバイスです。ワイヤレスイヤホン「AirPods(エアポッズ)」は耳を。2021年内にも発表されるというAR(AugmentedReality:拡張現実)メガネ「AppleGlass(アップルグラス)」は目を。この流れを見ていればおそらく嗅覚に関するデバイスが出てきてもおかしくないでしょう。

デバイス開発では、これまで外部調達していた半導体などを、今後3年間かけて内製化していくことが、アップルの開発者向けイベント「WWDC(アップルワールドワイドデベロッパーズカンファレンス)2020」で発表されました。

部品、特に半導体の内製化の動きは、昨今のトレンドでもあります。グーグルでは人工知能の精度を上げるために「TPU(TensorProcessingUnit)」というオリジナルのチップを開発。半導体大手のエヌビディアも、自動運転に使うチップを独自に開発するといった動きがあります。

内製化といってもすべての部品をアップルが作るわけではありません。これまでどおり、iPhoneの中身は日本製のような、外部の協力会社とも連携していくことでしょう。

ただ不可欠なパーツそのものはアップルシリコン(半導体)になりますから、今後はアップルシリコンを他社に供給する動きやパートナーシップビジネスも十分考えられます。 

iPhoneに囲い込む戦略は、他の動きからも読み取れます。これもWWDCと秋のイベントで発表されたサービスですが、今後はアップルウォッチを活用することで、定額制まとめサービス「アップルワン」でのフィットネスの提供や人の睡眠を分析するようなアプリケーションの開発、改善サービスを提供していくそうです。

新型コロナウイルスの影響もあり、ヘルスケア領域が現在トレンドであることも、アップルが同分野に注力していく1つの要因でしょう。

ただグーグルなどと比べると、アップルはクラウド、人工知能領域で比較優位性を持っているわけではありません。ただ弱いままではグーグルやアマゾンがますます先行していきますから、iPhoneでの利益が潤沢なうちに手を打っておこう、そのような戦略が窺えます。

新しく打ち出したサービスをきっかけに、利益率50%以上もあるiPhoneユーザーが1人でも増えれば、アップルとしては十分利益になるわけです。そして次第にサービスカンパニーとしても存在感を出していきたい。このような戦略を描いていると、私は見ています。

スマートスピーカーを販売したのは、まさに戦略の証しと言えます。現時点ではアマゾン、グーグルのスマートスピーカーと比べると音質を除き劣っていますが、いずれは同分野でもユーザーの心を摑みたい。そのように、考えているはずです。

「AppleTV+(アップルTVプラス)」という動画サービスも、まさにこのような戦略の1つだと考えられます。現在台頭している企業の多くはソフトウェアカンパニーです。そのためハードウェアエンジニアは、会社でのポジションが主役ではないため、心地よく思っていない人も大勢いると思います。

それがアップルに来れば、まるで神様のように扱われる。サービス会社ではあるけれども、ハードウェアカンパニーとしての矜持を持っている。そのような特徴が、アップルの強みなのです。

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