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「長引く腰痛」は病院の何科? 覚えておきたい診療科5つ

池谷敏郎(池谷医院院長/医学博士)

2021年01月20日 公開 2023年01月19日 更新

池谷敏郎

整形外科でも良くならない時...かかるべき診療科、受けるべき検査

整形外科に行って検査を受けて、骨や筋肉、関節にはとくに異常は見つからなかった、あるいは腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症を指摘されて治療を受けたけれども、痛みが取れない――そうすると、次に考えるべきは「整形外科では見つかりにくい病気がないか」です。

整形外科でも、先ほど説明したように、がんがないか、感染症がないか、大動脈解離や心筋梗塞といった重大な病気がないかといったことを調べます。でも、整形外科の専門は、やっぱり骨や筋肉、関節といった運動器。腰痛の裏に内臓の病気や血管の病気が隠れていた時に整形外科ですべて見つかるかと言うと、それは難しいでしょう。

たとえば、原因不明のリウマチ性の病気で、腰痛を引き起こす「強直性脊椎炎」は、最初に痛みやこわばりといった症状が出てから強直性脊椎炎と診断されるまでに平均で9年以上かかっていて、7割以上の人が複数の施設や診療科を渡り歩いている、と報告されています。

最終的に診断を受けた診療科は、整形外科、リウマチ科、神経内科など、いろいろです。なおかつ、強直性脊椎炎という診断が下されるまでに、椎間板ヘルニアや急性腰痛症(ぎっくり腰)、坐骨神経痛、関節リウマチ、関節炎などと、別の病名を告げられている人も多いのです。

強直性脊椎炎は非常に稀な病気なので、腰痛もちの人全員が心配する必要はありませんが、ぜひ知っておいてほしいのは、ひとつの診療科、1人の医師に、すべての病気を判別してくれることを期待してはいけないということです。

だから、整形外科で診てもらっても原因がはっきりしない、何らかの病名はついたもののなんとなく矛盾を感じる、あるいは整形外科で治療を受けていても腰痛が良くならないといった時には、別のアプローチも考えましょう。

 

「消化器内科、泌尿器科、循環器科、婦人科」

その時に、かかっておきたい診療科が、「消化器内科」「泌尿器科」「循環器科」、そして女性の場合は「婦人科」です。

まず、膵臓がんや膵炎といった膵臓の病気、十二指腸潰瘍などは消化器内科が専門です。また、肝臓や胆囊、胆管に結石ができる「胆石」でも腰痛が出ることがありますが、胆石も消化器内科で見つかります。

消化器内科で血液検査とともに腹部エコーや腹部のCT(コンピュータ断層撮影)を撮れば、これらの病気の心配があるかどうかがわかります。とくに糖尿病の人は膵臓がんのリスクが高いので、整形外科に行っても治らない腰痛がある時には、膵臓の病気を疑って一度は消化器内科にかかっておくと安心です。

次に、腎盂腎炎や尿路結石、水腎症といった病気は、泌尿器科です。泌尿器科でも、腎臓や尿管の病気が疑われれば、血液検査や尿検査とともに腹部エコーや腹部のCT検査が行なわれます。

腰痛に加えて微熱が続いているような時には慢性腎盂腎炎の可能性を考えなければいけません。また排尿の違和感があるような時にも、一度、泌尿器科にかかっておくことをおすすめします。

大動脈瘤は、循環器科が専門です。前述のように、大動脈瘤が大きくなって破裂すると大変なことになりますが、破裂する前に見つけることができれば、治療で予防することができます。

大動脈解離にしても、突然、激痛とともに発症することが多いものの、発症の仕方によっては腰痛が数日間にわたって持続することもあります。大動脈瘤破裂も大動脈解離も高血圧の人に多いので、健康診断などで血圧の高さを指摘されている人は、とくに気をつけておきたい病気です。

そして、女性の場合は、婦人科関連の病気で腰痛が出ることも少なくありません。腰痛に加えて、月経時の体調不良や月経痛の悪化、月経不順や不正出血などがある時には、まず、婦人科にかかっておくことをおすすめします。

このように、整形外科に行っても解決しない腰痛の場合には、消化器内科、循環器科、泌尿器科、婦人科(女性の場合)に一通りかかっておくべきです。

消化器内科で腹部エコーや腹部CT検査を受ければ、腎臓や膀う、尿管といった臓器も一緒に診ることができるので、泌尿器科関連の病気もある程度はわかります。また、大動脈瘤や軽症の大動脈解離が見つかることもあります。

ただ、同じ画像でも専門医が診ることで見つかる病気もやっぱりあるので、それぞれの診療科に一度行ってみることをおすすめします。

そして、検査を受けるなかで、いずれかの診療科で何か病気が見つかれば、その治療を行なって様子を見る。それで腰痛が良くなれば、原因はその病気のサインだったということです。

もしもひととおり診療科を回っても何も見つからなければ、その腰痛は何か特別な病気のサインというわけではなく、単なる腰痛だったと考えて経過を見るといいでしょう。これでしばらく安心して過ごすことができますよね。

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