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末期がん告知から9ヶ月…自分の名前が書けなくなった



2020年03月09日 公開

刀根健(とね・たけし)

がんが進行しさまざま症状に苦しめられる刀根健氏

心理学の人気講師として活躍ていた刀根健氏は、ある日、予想だにしなかった「がん宣告」を受ける。ステージ4の肺がんで、すでにリンパ節にも転移しているという厳しい状態だった。

ところが、驚くことに刀根氏は生還を遂げた。現在も講師として復帰し、日々精力的な活動を続けているという。そんな刀根氏の壮絶な体験を著した書『僕は、死なない。』では、がんの進行が影響し、刻々と症状が出ていく過程をも包み隠さずに記している。その一節をここで紹介する。

※本稿は『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ刊)より一部抜粋・編集したものです

 

胸に走った「刺されたような痛み」と「鉄板が入ったような異物感」

ある朝、布団の中で強く咳をした。

バキッ、胸の真ん中でいやな音がした。瞬間、刃物で刺されたような痛みが全身に走った。なんだ、何が起こった?

動けなかった。まるで全身が固まったように動くことができなかった。

まずい。何かが起こった……もしかして咳の衝撃で肋骨が折れたのか?

脂汗をかきながら、1時間ほど横になっていたが、なんとか身体を動かした。体勢を変えるたび、胸の真ん中に激痛が走った。薬箱から痛み止めを取り出し、口に含んで数十分、なんとか動くことができるようになった。

用事があるとき以外は、常に寝ていたくなった。まるで胸に鉄板が入っているかのように呼吸ができなくなってきた。息が大きく吸えない。

胸の中に常に異物感があった。何か得体の知れないものがゴロゴロと詰まっている感じだ。肺は風船の塊だから基本的に軽い。その中に密度の濃い、重い塊がいくつも感じられた。

身体を動かすと重い塊が体勢と一緒に動き、あきらかに何か別のものが体内で育っていることがわかった。

取りたい、切り取りたい、吐き出したい、でも、どうすることもできなかった。異物感は日ごとに大きくなっていった。

 

真っ赤に染まったテッシュの山

5月になった。3人のボクシングの教え子たちが心配して訪ねて来た。

「刀根さん、大丈夫ですか? 体調はどうですか?」
「大丈夫だよ、僕治るから、心配しないで」笑いながら返した。

しかし話を始めると咳と痰が止まらなくなった。ゴホゴホと苦しそうに咳き込む僕を、教え子たちは心配そうに見ていた。

話をしているうちに、あっという間にポケットティッシュが空になった。教え子の一人がすかさず「使ってください」と自分のポケットティッシュを渡してくれた。

「ありがとう」
ティッシュは血痰で真っ赤だった。真っ赤に染まったティッシュの山を見て、教え子たちは何も言わなかった。いや、言えなかったのかもしれない。

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