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非科学的な“ワクチン忌避”に惑わされない…いま押さえておきたい「基礎知識」

中西貴之(サイエンスコミュニケーター)、宮坂昌之(大阪大学名誉教授)

2021年06月10日 公開 2021年07月09日 更新

非科学的な“ワクチン忌避”に惑わされない…いま押さえておきたい「基礎知識」

「ワクチンを接種すると自閉症になる」
「こどもは自然に育てたほうがよい」
「ワクチンは病原菌」

こうした非科学的な言説はSNSやワイドショーなどでいまだ流布されており、「ワクチン忌避派」を生み出し続けている。

新刊『今だから知りたいワクチンの科学ー効果とリスクを正しく判断するために』(中西貴之 著、宮坂昌之 監修)は、難解になりがちなワクチンの話を、客観的で科学的かつできる限りやさしく噛み砕いた一冊。

本稿では同書より、根拠のない情報に惑わされないために押さえておきたい「ワクチンの基礎知識」について書かれた一節を紹介する。

※本稿は、『今だから知りたいワクチンの科学ー効果とリスクを正しく判断するために』(技術評論社 刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

ワクチンを忌避する人がいるのは事実

ワクチン忌避とは、感染性疾患から身を守るためにワクチンを接種できる環境にあるにもかかわらず、ワクチンの接種を拒む活動のことです。

ワクチン忌避派の人たちが語るのは「ワクチンを接種すると自閉症になる」「痛がるこどもがかわいそう」「こどもは自然に育てたほうがよい」「ワクチンは病原菌」など、いずれも根拠のない、あるいは非科学的で間違ったものです。

しかも、それらはワクチンを忌避する人たちの信念ではなく、ネットにそう書いてあった、誰かがそう言った、テレビのワイドショーでどこかの先生がそう言っていた、そういうネガティブな情報を盲目的に受け入れる、そういう姿勢が感じられます。

それらの意見の一部には、わかりやすい情報開示がなされない現代医療に対する漠然とした不安感の表現なのでは、と感じるものもあります。ワクチン従事者は、忌避する人たちの意見に真摯に対応・説明し、理解を求める必要があります。

ワクチンを忌避する理由として多く挙げられるのは、ワクチンの副反応問題です。2013年6月、厚労省は副反応のリスクを理に子宮頸がんワクチン(HPV)の積極的推奨を差し控えるという行動にでました。

その結果、せっかく日本国内のHPVワクチン接種率は70%前後で高止まりしていたものが、一気に1%未満まで低下し、そう遠くない将来、日本の多くの女性が子宮頸がんを発症し、苦しむことになるかもしれません。

また、この対応はワクチン忌避派の人々に「厚労省がワクチンは危険だと言っている」と曲解した裏付けを与えてしまいました。厚労省の対応には世界保健機関(以降WHO)も憂慮しています。

 

ワクチンは赤ちゃんの獲得免疫を助ける

感染症予防上、重要度が高いと考えられる予防接種については、予防接種法に基づいて、国民に対し予防接種を受けることが推奨され、行政による費用負担も行われています。

このうち、一定の年齢において接種を受けることが推奨されている「定期接種」の多くは赤ちゃんのうちに接種が行われます。

これについて、頻回の通院負担が大きく面倒だと感じたり、生まれたばかりの我が子に得体の知れない病原菌のようなものに思えるワクチンを接種したりすることに忌避感を持つ親御さんもいらっしゃると聞きます。

しかし、誕生直後の赤ちゃんには、自然免疫のほかはお母さんから受け取った移行抗体しかなく、獲得免疫は不完全なため、多くの病原体にとっては格好の獲物に見えるのです。

しかも移行抗体は半年程度しか持続しないので、その後の赤ちゃんは自分の力で獲得免疫を蓄えながら生きていかなければなりません。

獲得免疫をワクチンではなく、病気の感染に頼るとすると、赤ちゃんにとっては非常に高いリスクとなるので、感染よりも安全なワクチン接種によって赤ちゃんの免疫獲得を助けてあげるほうが理想的です。

そのため「かわいそうだから」という感情や「ワクチンは危険だ」という誤解で予防接種を忌避すれば、その子は高い確率で重篤な感染症を発症してしまいます。

世間には「病気で死ぬのは運命だから仕方ない、でもワクチンで後遺症が残ってはたまったものではない」と考える人もいるそうです。リスクはゼロではないですが、現在のワクチンは赤ちゃんに対しても非常に高い安全性が確保されています。

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ワクチンは赤ちゃんを守る重要な手段

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