非科学的な“ワクチン忌避”に惑わされない…いま押さえておきたい「基礎知識」
2021年06月10日 公開 2021年07月09日 更新
ワクチンは赤ちゃんを守る重要な手段
赤ちゃんはお母さんの胎内にいるときから、胎盤を介して抗体を受け取り、免疫が構築され始め、誕生時には必要最低限の免疫は持っています。しかし、胎内では病原菌に感染する機会がないので、獲得免疫がありません。
獲得免疫は、出生時やその後に、空気中あるいは抱っこした人経由などで雑菌をうつされて、時間をかけて獲得されていきます。したがって、出産後、当分の間は、十分に感染症から保護してあげる必要があります。
授乳期の赤ちゃんは、母乳を介してお母さんから引き続き抗体を受け取りますが、そのような抗体は永続的ではなく、数か月で失われてしまうことがわかっています。
また、何らかの理由で母乳を摂取できない場合は必要となる抗体も得られないのでなおさらワクチンによる保護が必要です。赤ちゃんがかわいそうと、ワクチン接種をためらうケースも耳にします。
その気持ちはわかるのですが、私たちが雑菌だらけの環境で過ごしていることを思い出せば、何のワクチン接種もなく赤ちゃんを外界にさらすほうがいかに危険なことかが理解していただけるのではないかと思います。
日本では、生後2か月からワクチンの接種が始まります。ワクチン接種回数は合計15回以上にもなり、毎月のようにワクチン接種が続くことになります。これは子育ての上では大きな負担になることと思います。
そのような負担を軽減するために、同時接種と呼ばれる、複数のワクチンを同時に接種する方法があり、海外ではすでに広く行われています。同時接種は保護者の負担を大きく軽減し、赤ちゃんがより早期に獲得免疫を得ることにつながる接種方法です。
ワクチンに関する古い知識のアップデート
かつて、赤ちゃんへのワクチン接種を忌避する理由のひとつに、ワクチンを接種した際の重篤な副反応である「乳幼児突然死症候群」説がありました。
乳幼児突然死症候群とは健康に見えていた乳幼児が突然死亡し、窒息などとは異なり、その原因がわからない病態で、SIDSとも呼ばれます。
発症は1歳未満の乳児に多く見られ、厚労省のデータでは2019年に78名の乳幼児がSIDSで亡くなっており、乳児期の死亡原因としては第4位となっています。
日本においては2011年にヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンを含むワクチンの同時接種を受けた乳幼児の死亡が7例報告されたことがありました。
それがきっかけで、ワクチン接種とSIDSの因果関係に関する議論が持ち上がり、厚労省が全国的な調査を行っていますが、残念なことに、いまだに結論は出ていません。
参考事例として、米国疾病管理予防センター(以降CDC)はワクチン接種とSIDSの間に因果関係はないと結論しています。
その理由は、赤ちゃんの仰向け寝を推奨するようにした結果SIDSが急激に減少したこと、ワクチンの接種率とSIDSの発症率に相関がないことなどが挙げられています。
SIDSは生後6か月までに起きることが多く、この期間は、ワクチンを毎月のように接種する時期と重なるため、ワクチンとの関係が疑われたものです。
厚労省では引き続き乳幼児期のワクチン接種は推奨しており、SIDSについては、保護者の対応によりリスクを低減できるとしています。