株を“2年後”に手放す日本人は損してる? 時価総額をも無視する「考えない投資」の強さ
2021年04月09日 公開 2022年10月06日 更新
「時価総額ランキング」を無視できるワケ
「世界経済に投資する」メリットは、ほかにもあります。それは、世界全体のパワーバランスの変化までカバーできる点です。
たとえば、アメリカと日本を例にとってみましょう。直近では、アメリカのアップル社は時価総額で2兆ドルを突破しました。
そのほかのアメリカ企業株も絶好調で、日本でも投資ブームが起きているほどです。
ですが、じつは約30年前、平成元年の世界の時価総額ランキングでは、上位50社中32社を日本の企業が占めていました。なんと世界1位は日本のNTTだったのです(当時の時価総額は約1638億ドル)。
それが2018年には、上位50社のなかに日本企業はトヨタ1社だけ(35位)。
1位のアップル社を筆頭に、トップ10にはアマゾンやグーグル、フェイスブック、アリババといったアメリカや中国のIT企業がずらりと並んでいます。
これはつまり、日本がデフレなどの不景気で経済が低迷している間に、世界の企業はビジネスシーンを拡大させて、ぐんぐん成長していったということです。
もしかしたら、さらに30年後にはインドやアフリカの企業などが増えているのかもしれません。
いずれにしても「世界の株式」を幅広くフォローする投資信託であれば、これらをすべてフォローできます。
投資信託は「数十から数百の銘柄に投資している」ので、そのうちのいくつかの銘柄が大打撃を受けたなら、それを売って別の銘柄に入れ替えればいいだけです。
それをプロのファンドマネージャーが判断してやってくれるので、自分は何もする必要はありません。値下がりしても、企業のパワーバランスが変わっても、慌てて売らなくていいのです。
短いスパンで見れば、コロナショックの最中に投資信託で短期的に売買を繰り返して、儲けを出した投資家もいるでしょう。しかし、長い目で見るなら、この時期に売らなかった人のほうが最後には勝つのだと、私は思います。
投資信託は、長期で持っておくだけで利益は増えていきます。
世界の株式に長期分散投資している人は、いずれみんなプラスになっていくでしょう。
暴落すら「リターン」に変える魔法とは
「売らないまま、価格が下がり続けたらどうなるんだ」
ここまで読んで、こう思った人もいるでしょう。たしかに、買った商品の価格が下がり続けたら、不安になる気持ちはわかります。
けれど、10年くらいは積み立てていれば、いつかは価格が少し上向きになる瞬間があります。
私のおすすめ投資法は「売らない」が前提ですが、もし現金化を望んでいるならば、その価格上昇の瞬間をみはからって売ると良いでしょう。
"ある魔法"によって、大きく利益を得ている可能性もあります。
積み立て投資信託には、「ドル・コスト平均法」という力が働きます。この仕組みが、魔法の正体です。
その"魔力"を、リンゴの価格で例えてみましょう。
あるところにリンゴが大好きな家族がいたとします。この家族には全員でたくさん食べるために毎月1万円分、リンゴを買うという厳格なルールがあります。
・1月
リンゴの価格が100円でした。そのため、「100個」のリンゴを買いました。
・2月
20円値下がりしてリンゴの価格が80円でした。1万円で買えるだけの「125個」のリンゴを買いました。
・3月
リンゴの価格が元に戻り100円になりました。この月は1万円で「100個」を買えました。
さて、この3カ月で家族はリンゴを何個食べたでしょうか?
答えは「325個」です。
もしリンゴの値段が100円に固定されていたら、3カ月で「300個」しか食べられなかったはず。それが、不思議なことに「25個」も多く獲得することができたのです。
量に着目すると、途中でモノの価格が下がることにより、量を多く買えたことがわかります。
このリンゴと同じように、積み立て投資信託をしたと考えてください。
1口1万円の商品を、毎月3万円で積み立てたとします。その商品が5000円に値下がりしたら、普段は3口しか買えなかったのが、6口に増えます。
つまり、値下がりしたら「量」を増やせるということです。
値下がりが続いたとしても、それが1万5000円に値上がりするときまで持っていたら、「価格×量」でかなりのリターンを得られるというわけです。