パニック発作は予兆なく襲ってくる
精神医療の世界基準となっている、米国精神医学会刊行の『精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版』(以下「DSM-5」)には、パニック発作の診断基準が記載されています。
パニック発作の診断基準は、強い恐怖感や不快感が突然高まり、数分以内にその頂点に達する。その間、以下のうち4つ、またはそれ以上が生ずれば、パニック発作と考えられます。
1.動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
2.発汗
3.身ぶるい、またはふるえ
4.息切れ感、または息苦しさ
5.窒息
6.胸痛、または胸部の不快感
7.吐き気、または腹部の不快感
8.めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
9.冷感(悪寒)、または熱感
10.異常感覚(感覚まひ、またはうずき感)
11.現実感喪失(現実ではない感じ)
12.コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
13.死ぬことに対する恐怖
パニック発作は、なんの予兆もなしに襲ってきます。私の場合もそうでした。毎日乗り慣れた電車の中で急に発作が起きるとは想像もしませんでした。パニック発作を起こしやすいのは、
・乗り物の中
・渋滞中の車の中
・閉ざされた空間
・高い場所
・人ごみの中
・初めての場所
などといわれています。
ここでまず、お伝えしておきたいことがあります。どんなに激しいパニック発作が起きても死んでしまうことはありません。安心してください。私も発作が起きたときは、「死なないから大丈夫」と何度も唱えていました。
また、「発狂するのではないか」という恐怖を感じることもあるかもしれません。自分が自分でないように感じたり、自分の行動が夢の中で起こっていることのように感じられたりすることもあるので、「脳の病気ではないか」と不安になることもあるでしょう。
でも、パニック発作で発狂したり、脳がダメージを受けたりすることはないので、安心してください。パニック発作で「死ぬことはない」「発狂はしない」、そして「脳の病気ではない」と理解しているだけでも、恐怖や不安を多少なりとも減らせるのではないでしょうか。
繰り返すパニック障害
パニック障害の人はパニック発作をくり返し起こします。そして発作を何度も経験するうちに、「また発作が起きるのではないか」と心配でたまらなくなってしまいます。
これは「予期不安」という症状で、パニック障害の代表的な症状のひとつです。予期不安が強くなるほどパニック障害はこじれやすく、克服に時間がかかります。
反対に、予期不安がそれほど大きくならないうちにケアすると、短期間でパニック障害を克服できることもあります。予期不安があまりないうちに当院にいらしたTさん(54歳女性)は、電車が怖くて乗れず、初回はバスを乗り継いで来院されました。
そのときに鍼治療でからだのこわばりを解消したら、心のこわばりもほぐれたようです。パニック発作がすっかり治まったとのことで、2回目は電車に乗って来院されました。これはレアなケースかもしれませんが、パニック障害を克服するには早く対処するほど、効果も出やすいといわれています。