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一見さんおことわりはどこまで本当なのか



2021年04月23日 公開

柏井壽(作家)

祇園

「京都の由緒正しいお店は〈一見さんおことわり〉で、紹介無しで入ろうとしても追い返されてしまう」――。

「一見さんおことわり」は京都の格式の高さを象徴するフレーズとしてあまりにも有名だが、実際のところ、京都には「一見さんおことわり」のお店は実在するのだろうか? 京都を知り尽くす作家がその真実を明かす。

※本稿は、柏井壽著『京都力』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです

 

基本的には花街のお茶屋さんだけ

京都の「イケズ」を象徴する言葉に〈一見さんおことわり〉があります。

「京都観光をしていて、祇園の和食屋さんへ入ったら〈一見さんおことわり〉と言われ、追い出されてしまった」

テレビのインタビューに答えて、そんな話をする人がいました。インタビュアーは、さもありなん、とばかりに、「京都は敷居が高いですからね」と相槌を打っていました。

報道に携わる人でも〈敷居が高い〉という言葉を間違って使う人がいるのだと呆れたものですが、はたしてこれは事実なのだろうかと、いぶかってしまうのが、多くの京都人です。

誤解されていることが多いのですが、京都の街なかにある、ふつうのお店で〈一見さんおことわり〉を謳っているところはめったにありません。

基本的には花街のお茶屋さんだけです。もしくはそれに付随するお茶屋バーや、クラブなどのお酒を飲む店ぐらいでしょうか。しかし後者に限って言えば、それはなにも京都に限ったことではなく、銀座や大阪の新地などでもおなじはずです。

会員制という札を玄関先に貼って、一見客を断る夜の店は、京都のみならず全国各地にあります。しかしそれを、イケズと呼ぶ人はいないと思います。おなじシステムを取っても、なぜ京都だけがイケズと言われるのでしょうか。

飲食店に至るまでそう思われるのには、大きな理由があります。それは外観から来る、閉ざされた空間というイメージだろうと思います。

いかにも〈一見さんおことわり〉っぽい店の構えに、初見の客は最初から臆しているせいで、そう思い込んでしまうのです。

 

入店を断られてしまう本当の理由

たしかに、予約もせずにいきなり飛び込んで、断られるケースもあると思います。たとえ空席があっても、満席だと言って断られることもあるでしょうし、準備不足で断られることもあるでしょう。

しかしながらお客さんの側は、一見客だから断られたと思い込んでしまうのです。でも、断られる理由はほかにあるのです。そのもっとも大きな理由は、満足のいくもてなしができないから、です。

はなから観光客を相手にしているお店は別として、むかしながらの商いを続けている京都の料理屋さんは、おなじみさんを主な客として料理を作っています。ですから客の好き嫌いや嗜好を熟知しているのです。

そんななかで見ず知らずのお客さんがいきなり訪ねてこられても、どんな料理をどう味付けして出せばいいのか戸惑うのです。決して意地悪をして断っているのではないのですが、これもイケズの一端として映るのかもしれませんね。

繰り返しになりますが、今の時代になっても京都で〈一見さんおことわり〉を貫いているのは、花街のお茶屋さんだけだろうと思います。そして他府県や諸外国からお越しになるお客さんにとって、一度は体験したいのがお茶屋遊びですね。

つまり、京都において最大の憧れであるお茶屋さんが〈一見さんおことわり〉ゆえ、京都ぜんたいがそうなのかと思われ、その根源にあるのが京の〈イケズ〉、という図式なのでしょう。

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