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「大学も対面授業にすべき」とは言い切れない“数字のカラクリ”

2021年07月01日 公開

小山信也(東洋大学理工学部教授)

小山信也

「接触機会の8割削減」など、コロナ禍では当初からさまざまな数字が飛び交ってきた。根拠が正しく伝わらず、数字だけが一人歩きしている例も少なくない。

流れてくる数字を何となくの印象で判断しないために、意識すべき考え方とは? 東洋大学理工学部教授の小山信也氏は新著『「数学をする」ってどういうこと?』の中で、「ものごとを数学的に考える」ための要点をまとめている。

同書では、高校生の景子、中学生の優、数学者のゼータ先生の3人による会話形式で、数字と正しく向き合うコツが解説される。ここではその中から、大学と小中高との対面授業の感染リスクの違いについて、2次関数を使って考える一節を紹介する。

※本稿は小山信也著『「数学をする」ってどういうこと?』(技術評論社 刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

大学と小中高の感染リスクの違いを数学で考える

【景子】最近、対面授業の再開を求める投書を見ました。

【優】「小中学校や高校が再開したのに、なぜ大学だけ再開しないのか」という疑問を抱く人もいるようです。

【ゼータ】確かに、学費を払っていながら一度もキャンパスに入れない学生や、友達もできずサークル活動も一切できない新入生は、可哀そうだね。

【景子】学費については、いろいろな意見があるようですね。

【ゼータ】非対面授業の実施にコストがかかるなど、大学側の事情もあるようだけど、それはさておき、小中高と大学の違いを分析してみよう。

【優】2次関数を使ってですか?

【景子】接触機会の回数は、人数に比例する1次関数ではなく、人数の2乗で表される「2次関数」ということですよね。

【優】大学の学生数って、何人くらいなんですか?

【ゼータ】一例として挙げると、主要大学の小さめのキャンパスなら、1学年1000人規模で、4学年で4000人規模が、典型的かな。

【景子】私が通っている高校の生徒数は、1クラス40名で、1学年10クラスで400名、3学年で1200名くらいです。

【優】大学の学生数は、高校の生徒数の約3.3倍ですね。

【ゼータ】「高校が再開したのだから、大学も再開すべき」と考えている人たちも、これくらいの人数の差があることは知っていると思う。

【景子】 大学の方が規模が大きいのは当たり前ですからね。

【優】 「少しくらい規模が大きくても、大学は設備もよいしお金もあるんだから、対策をきちんとして授業を再開してほしい」という意見でしょうね。

 

同じ人数でも大学の方がリスクが高い

【景子】ただ、人数が3.3倍でも、感染リスクはその2乗ということは、あまり知られていないかもしれません。

【優】2乗ということは、3.3×3.3=10.89で、10倍以上になりますね。

【景子】3倍くらいなら、「対策をして再開してほしい」と思えても、10倍となると、どうでしょうね。そこまで主張しづらい気もします。

【優】2次関数は恐ろしいんですね。もし規模が4倍ならリスクは16倍だし、規模が5倍ならリスクは25倍となりますから。

【ゼータ】ところが、小中高と大学の違いは、それだけじゃないんだ。

【優】人数のほかに、まだ何か違いがあるんですか?

【ゼータ】実は、同じ人数でも、大学の方がリスクが高いんだよ。

【景子】それは意外です。どうしてですか?

【ゼータ】同じ200人が通学する場合を考えよう。高校は、40人のクラスが5クラスで200人。大学は、200人が大教室で授業を受ける場合が典型的な授業風景となる。

【景子】高校生は、ほとんどクラス内の生徒としか接触しないから、接触機会は40×40×5=8000。

【優】大学生は、200人の学生が一つの教室に集まるので、接触機会は200×200=40000。

【景子】大学の方が、5倍も大きいですね。

【優】これも、2次関数であることの影響ですね。

【ゼータ】「クラス数が5」は数式上の扱いでは、「5倍」として算入する。

【景子】「5の2乗で25倍」というわけではないのですね。

【ゼータ】2次関数の中で、そこだけ1次関数になるわけだ。

【優】だから、高校のリスクは小さくなるんですね。

【景子】細かく分割するほど、リスクが下がるわけですね。

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