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「指示待ち部下」を一変させる“問いかけ”の言葉

山下貴宏(R-Square&Company社長/共同創業者)

2021年07月20日 公開 2024年12月16日 更新

 

ケース2「顧客に対する自社のソリューションメリットは何か」を確認したい時

「うちの製品で顧客の何が解決できる?」と"自社の視点"で部下に問いかけると、おそらく「これこれを解決できます」と、製品のメリットを挙げたり、解決できる理由づけをしたりするでしょう。これだと、顧客がそこにメリットを感じなければ終わりです。

"顧客視点"を意識させ、「それを使うお客様の、さらに上長の方にとってのメリットは何か?」「顧客の組織全体でどんなメリットがあるか」「使う現場の目線ではどうなのか」など、メリットが"影響を及ぼす範囲"について多角的に問いかけましょう。

その問いで部下が視野の狭さに気づけば、「現場に対してはメリットを提案できていなかった。ここは今のうちに押さえておきたいから、先方に時間をもらおう」などと、顧客情報を整理して、次のアクションにつなげるはずです。

仮に自社商品に優位性を感じない営業職がいたとしましょう。その場合でも、「顧客ニーズに合うかを確かめよう」と、働きかけてください。そこで「複数部門でメリットがなかった」のであれば、提案しない決断もあるかもしれません。

ただ、この時、自社にも顧客にも様々な課題があり、改善の"サイクルを回す"必要があることは伝えましょう。その時はダメでも、課題が見えてくれば、顧客に見合う自社サービスの改善にもつなげます。

また、「お客様も、全てのサービスは受け入れられないけれど、部分的には可能性があるかも」などと、提案の糸口が見えてくることもあるわけです。

こうしたやりとりができれば、「この会社にはこんなソリューションもあるんだな」と顧客にインプットされます。現時点で受注につながらなくても、今後、商談が進展する可能性は広がっていくでしょう。

 

ケース3「顧客からの要望に対してどのような提案がよいか」を確認したい時

「顧客の要望を踏まえて、どう提案する?」と部下に促すと、字面通りに「顧客がこう言っていたので 、AとB の製品を提案しようと思います」と言葉が返ってくる。これでは、「顧客が言った」、または、「上司が聞いた」上での提案しかできません。

部下に主体的に考えてもらうには、"顧客に見えていない"ニーズや課題が何かまで想像できる問いかけが必要になります。

例えば、顧客がIT企業、さらにその先の顧客の顧客が流通企業だったとします。その場合、「我々にも流通のお客様はいるよね。こういう事例があるけれど、今の ITのお客様はそれに気づいているかな?」と問いかけてみる。

つまり、「"顧客の顧客"の観点から提案を考えたら何がベストだと思う?」と、顧客が担う"その先の顧客"に視点を向けるのです。顧客と同じ目的や目線でソリューションを考えられたら、信頼を得やすくなりますよね? これが"あるべきToBe"視点による問いかけです。

 

上司が「コーチングスキル」を上げるために必要なこと

これらのケースに通じる思考が"セールス・イネーブルメント"です。セールス・イネーブルメント自体は成果起点の営業人材育成のことですが、ここで挙げた事例は、顧客の意思決定を前に進めて最終的に受注につなげるもので、"顧客起点"で考える思考そのものがイネーブルメントのコンセプトに通じています。

もちろん、上司自身のやり方は経験を踏まえた貴重なスキルや知識から成るものなので、部下も知りたいはず。ただ、それだけだと、「俺のやり方をやってみろ」になってしまう。そこに"顧客視点"を加えることができれば、主体的に考え、行動できる部下に育っていくでしょう。

「顧客視点で見たらこうだね。ちなみに自分の時はこうやったよ」と、 自分のやり方をあくまで1つのTipsとして伝えることができれば、より説得力が増すはずです。

リモートワークの普及により、部下だけでなく、上司にとっても、コミュニケーションがより難しい時代になりました。部下だけでなく、上司のマインドも変えないといけません。自分の経験だけを頼りにせず、顧客視点でどうなのか、いい意味での"疑いの目"を常に持っておく必要があります。

必ずしも自分の中に答えがあるというわけではない前提で、部下だけでなく、上司にとっても、日々アップデートし続けていく姿勢が求められるのです。

 

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