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お坊さんだった亡き母が「なんでもかんでもほめる子育て」を否定した理由

永松茂久(人財育成JAPAN代表取締役・永松塾主宰)

2021年07月28日 公開 2024年12月16日 更新

お坊さんだった亡き母が「なんでもかんでもほめる子育て」を否定した理由

人生で大切なことは、母から繰り返し言われた「この一言」だった──『人は話し方が9割』の著者・永松茂久氏はユニークな人材育成法を多くの人に伝えてきた。

その背景には、自身の人生を支えてくれた母からの言葉があったと語る。本稿では、その母の言葉とエピソードを綴ったドキュメンタリーエッセイ『喜ばれる人になりなさい』から、母から学んだエピソードを紹介する。

※本稿は、永松茂久著『喜ばれる人になりなさい 母が残してくれた、たった1つの大切なこと』(すばる舎)から一部抜粋・編集したものです。

 

お母さん向けのすごい教育論

母は独特の目線を持っている人だった。お坊さんの資格を取って、悩める人たちに向けていろんなカウンセリングをやっていた。仕事や人生、考え方を提案しながら、ときにはずっとその人の話を聞いたり、ときには厳しくさとしたりしながら多くの人に向き合っていた。

その中で、際立って印象に残っていることがある。相談相手は子どものことで悩んでいるお母さんだった。内容を簡単に説明すると、子どもが引きこもりになってしまい、子育て勉強会に行ったところ「本人の自己肯定感が足りていないから、とにかくほめて育てなさい」と言われたらしい。この悩みに対する母の回答に僕はびっくりした。

「とにかくほめろってどういうこと?」

――何があってもいい面を見なさいということでした

「それをしたら子どもをダメにするんじゃない?」

――え??

端っこで説法を聞いていた僕も、そのお母さんと同じく「えっ?」と思った。

「あのね、最近思うんだけど、『どんなことでもほめなさい』っていう理論があるけど、私はそれはどうなんだろうと思うのよね。家ではそれで通用するかもしれない。でもね、私は子どもはいつか社会に返す存在だと思ってるのよ」

社会に返す。たしかに僕と弟はそう言われて育った。その言葉に「なんて冷たい母親なんだ」と思ったこともある。そういう意味では「自分の子だから」と甘やかされた記憶はあまりない。

お世話になった人にちゃんとお礼は言ったか?
筋道は通しているか?
恩を忘れてはいないか?
自分の我ばかりを通そうとしていないか?

子どもの頃はうっとうしかったが、そのうっとうしい教えが社会に出て驚くほど役に立った。母は最初から僕たちを本気で「社会に返す」つもりだったのだと思う。

「なんでもかんでもほめてばかりいたら、いつかその子はほめられないと何もできない子になるわよ。ダメなことはダメってしっかりと言うのも愛じゃないのかな。子どもを信じているからこそ厳しいことも言えるのよね」

なるほど。たしかに信じていない人に厳しいことは言えない。

 

「聖母マリア」を目指さない

――でもその勉強会で『厳しいことを言ってはいけない』って言われたんです。うるさく言ってはダメだと

「あなたは聖母マリアになろうとしてるの? お母さんってね、何千年も前からうるさい存在だったのよ。当たり前よね。自分のお腹を痛めて産んだ子なんだから。そんな何千年もたくさんの人ができなかった聖母マリアみたいな存在を目指すほうが無謀じゃない?」

これには笑った。そして今、子育てで悩んでいるお母さんに僕がこの言葉を言うと、けっこうハッとする人が多いが、実はこれは母のパクリだ。

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お母さんは「うるさくて当たり前」の存在

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