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生き方

お坊さんだった亡き母が「なんでもかんでもほめる子育て」を否定した理由

永松茂久(人財育成JAPAN代表取締役・永松塾主宰)

2021年07月28日 公開 2022年03月03日 更新

 

お母さんは「うるさくて当たり前」の存在

「お母さんはそもそもうるさくて当たり前。『どんなことでもほめなさい』系の話に疑問を持つのはその理由からなのよ。子育てに悩んで、その上、ほめられない自分にまた悩んで母親自身が自己肯定感を失ってしまったら、結局一番かわいそうなのは子どもだよ。それより他にやることがあるでしょ」

――たつみさんはどうされてるんですか?

「私は母として3つのことだけを決めてるの」

ちょっと間を置いて母は答えた。

「1つめは子どもに対する心配をする時間があるなら、それを自分の好きなことをやる時間に変えること。その姿を子どもに見せれば、子どもは将来そうやって楽しく生きることができる人間になるって信じてるから。2つめは子どもがどんな状態であっても、お母さん自身が自分の機嫌は自分で取りながら明るく生きること。そして3つめが何があっても子どもの味方でい続けること。何があっても子どもの未来を信じること」

僕も思わずメモをした。この話は、母がもうすでに60歳を過ぎていた頃の話だが、そのノートは今でも手元に残っている。

 

年を重ねるたびに心に響いてくる「母の一言」

約25年もいろんな人の人生相談を受けて熟練したのか、もしくはあまりにも僕と弟が迷惑をかけすぎたがゆえに開眼させてしまったのかはわからない。人様に迷惑をかけて頭を下げさせたのは、僕と弟と通算したら申し訳なくなるくらいの数だから。

息子が言うのもなんだが、母の言葉に矛盾はなかった。いや、むしろ母はこの言葉に沿って生きてきたのかもしれない。厳しいときは家出したくなるくらい厳しかったし、どんなときもいつも明るかった。そして何があっても僕たちを見捨てなかった。

「あんたのこと信じてるよ」

「大丈夫よ、あなたならできるから」

母のこの言葉は年齢を重ねるたびに、今も深く心の奥に響いてくる。

 

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