「結婚式もいいけど、それよりもお葬式を大切にしなさい」
この状況をきっかけに僕の仕事は出版のほうに比重が偏ってきたのだが、「この業界で生きていこう」と決定づけるもう1つのきっかけがあった。
母の入院を知らせてすぐ、一番初めに来てくれたのが、僕の本を一番世に送り出してくれたきずな出版の岡村季子社長(当時は専務)だったことだ。
きずな出版は名前の通り、人と人との絆を一番大切にする出版社で、僕のイベントを通して母のことをとても大切にしてくれた。そしてこの苦しい時期に東京からわざわざ来てくださったことに、今でも感謝が湧いてくる。
それ以来「あんたはきずな出版を裏切るなら出版をやめなさい」が母の口癖になった。
「結婚式もいいけど、それよりもお葬式を大切にしなさい」といつも母は僕たちに言っていた。その母の言葉ではないが、苦しいときにこそ駆けつけることができる、そんな人間でありたいと思う。
その思いから僕はその時期の講演を事業の中から外せるだけ外し、出版に力を入れることにしたのだ。