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大学教授が答える「空中に浮いてる間に地球が回ったら海外に着地できる?」

2021年10月13日 公開

石川幹人(明治大学教授)

 

宇宙服を着て上空へ

さて、この空気の影響と初速度を頭に入れて、質問にあるような手軽な海外旅行ができるかどうかを考えてみましょう。地球上の空気も地球の自転によって地面と一緒に回転しています。なので、ただ浮いているだけだと、先ほどの電車に乗った人と同じように、空気と一緒に運ばれてしまいます。

つまり、地面から見て浮き上がった地点の上空に、半日たっても留まってしまうのです。でも、もし宇宙服を着て数万メートルの上空に浮いていられたら、そこまで行くと空気が薄いので回転していても、その影響はほとんどありません。

しかし、空気が薄い分、浮き続けること自体がすごく難しい作業になってしまいます。なぜ浮き続けられないのかというと、たとえばヘリコプターを思い出してください。ヘリコプターは空気を下に押しやることで機体を浮かしているのですが、空気が薄い上空高くでは、その押しやる空気が少なくなるので浮きにくくなります。

つぎに初速度の問題を考えます。じつは、地球上の地面は、地球の自転により西から東へ高速で移動しています。これは地域(緯度)によって異なり、日本付近の地面(球体である地球の表面)は、音速(音が空気中を伝わる速さで、時速約1200キロメートル)程度で移動しています。

地面から本当に真上に高く浮き上がるためには、音速で移動している距離を差し引くために、斜めに音速で浮き上がらねばなりません。それは、ジェットエンジンで東から西に加速しないといけないほどの大作業になります。結局、ジェット機に乗って海外旅行に行くほどの手間がかかるのです。

つまり、空気の問題、初速度の問題、ともにかなり大きく、浮いたままの海外旅行はあきらめるほかありません。

 

ジェット気流に乗ってみる

しかし、逆に空気の影響を利用した手軽な海外旅行の可能性ならば少しあります。日本付近の中緯度地方の上空数千メートルで西から東に吹くジェット気流に気球などを使って乗ることです。地球の自転による地面の移動について、もう一度考えてみましょう。

赤道付近の地面は回転の直径がもっとも大きいので、日本付近よりももっと速く移動しています。ジェット気流は、この「超」音速で移動している赤道付近の地面の摩擦によって、その上空の空気が回転し、ひき起こされます。

赤道付近で回転が加速した空気がなんらかの原因で、中緯度地域に移動したとします。すると、中緯度付近の地面はもともと音速で回転していますが、この赤道付近から来た空気はそれよりもっと速く回転し、ジェット気流になるのです。

国際線の航空機はジェット気流の影響を受けるので、世界一周旅行を東回りですると移動時間がかなり少なくすむことが、すでによく知られています。気球に乗ってジェット気流で手軽に海外旅行と聞くと、優雅な感じがしますが、途中で海に落ちてしまう危険があるので、現実は命をかける大冒険になってしまいます。

じつは、太平洋戦争のさなか、日本軍はこの発想で気球に爆弾を積んで、アメリカ本土に攻撃を仕掛けていました。

その「風船爆弾」のいくつかはじっさいにアメリカ大陸まで到達していたそうです(明治大学平和教育登戸研究所資料館の資料より)。将来、技術開発が進んで、気球に乗って安全に、そして優雅に海外旅行ができる日が来るかもしれませんね。

 

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