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実は夢を見ているだけ? 科学者が解き明かす「金縛りの正体」



2020年10月28日 公開

石川幹人(明治大学教授)

夢と金縛りの関係

共同研究者とともに「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」を立ち上げた疑似科学研究の第一人者である明治大教授・石川幹人氏。健康管理から仕事まで、多くの人々は"科学らしきもの"に頼りたくなるもの。

ただし突き詰めてみれば、そこに明確な根拠があるかどうか疑問符がつくものも少なくないだろう。

石川氏は著書『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』にて、人が"疑似科学にハマってしまう理由"を追究している。本稿では、同書より「金縛り」の正体に迫った一説を紹介する。

※本稿は石川幹人著『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書刊)より一部抜粋・編集したものです

 

夢はなぜリアルではないか

狩猟採集時代から、人類は周囲に起きる現象の中に規則的なパターンを見出し、生活に活かしてきた。それが科学のはじまりであり、また疑似科学のはじまりでもある。両者の発端をたどると、どちらも個人的体験に行きつく。

つまり個人的体験には、科学に至るものと疑似科学に低迷するものが共存しているわけだ。私たちは、自らが体験することを信じやすい。というか、信じざるをえない。

目の前にあるコーヒーカップを取り上げて口元に運び、内部の液体をすすると芳醇なコーヒーの香りが口いっぱいに広がる。この体験を現実として受け止めるのは当然のことだ。

かりに、コーヒー体験が現実でなくて夢だとしたら、夢で満足できてしまう。あらゆる欲望が夢で満足されるようになると、現実世界の生活がおぼつかなくなる。

現実世界が厳しい状況になれば、白昼夢に逃避すればよいからだ。私たちの夢が、現実ほどリアルでないのにはそういう意味で理由がある。夢でこと足りてしまえば、現実生活はおろそかになり、子孫を残すことも少なくなるだろう。

進化生物学の原理にしたがえば、子孫を残す可能性が低い「心の機能」はなかなか身につかない。だから私たちの夢も、一般にそれほどリアルではなく、現実か夢かが識別可能なわけだ。夢を見ても「これは現実ではないな」と思うくらいがちょうどよいのである。

 

金縛りの正体と「夢見状態」の関係

夜中にはっと目がさめたら、いつもの寝室の天井が見える。トイレに立とうと思うが手足はびくとも動かない。どうしたのだろう、とあたりを見回すと、手足に四体、腹のうえにさらに一体、地縛霊らしき異様な妖怪がみんな一斉に、こちらをにらんでいるではないか。

ぎょっとして、こみあげてくる恐怖に心臓は高鳴る。その異物を払いのけようと脳が命令を発するものの、手足は氷のように固まっている。最後の手段だと、胸の奥底から声にならない悲鳴を絞り出す。

こんな体験をすると、妖怪が現実にいるという信念を抱くのも当然である。しかし現代の科学では、これらの妖怪は夢の中の存在であると見なすべき強い証拠が得られている。

金縛り時の生理状態が、夢を見ているときの生理状態に類似しているのだ。つまり意識は、目ざめた状態に近づいてはいるが、まだ夢見状態なのである。じつは夢見状態では、そもそも手足が動かないのである。

夢の中では、飛んだり跳ねたり、逃げ回ったりと、現実生活のシミュレーションをしたり、架空の世界を冒険したりしている。そのときに現実の身体が動いたら危険である。寝室のある2階から階段を転げ落ちかねない。

人間の身体機能はよくできているもので、夢見状態では身体運動の機能がオフになっているのである。金縛り状態とは、目ざめたという意識はあるものの、いまだ夢見状態にあるために手足が動かない状態なのだ。

そうだとすれば、金縛りになったときにどう考えるべきだろうか。たとえば、夢の中では手足が動かないよう、自分の身体機能は正しく働いているな、と思うのがよいわけだ。

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