一社だけで働き続けられない時代...今後のキャリアを左右する「職場での学習」
2021年11月05日 公開 2022年01月13日 更新
職場における他者からの支援
研修のように仕事から離れて学ぶ機会が提供されるものもあります。一方で、最も長く時間を使っている仕事自体から学ぶことが一番多いということは、違和感なく受け止められるのではないでしょうか。
本書では、仕事における他者からの支援として、業務支援、内省支援、精神支援の3つが紹介されています。
最もわかりやすいのが、業務支援と言えるでしょう。業務を行うための、直接的で具体的な助言や指導のことです。エクセルやパワーポイントなどの業務ツールの使い方、報告書のフォーマットに合わせた記載方法や、会議での発言内容について、様々なアドバイスを受けること等が該当します。
成長のために、内省は欠かせないものと言えるでしょう。どのような行動でも、行っただけよりも、振り返る時間を持った方が将来に残る知見に昇華されやすいと考えられています。そのような内省を促す支援を内省支援と呼びます。
もう一つの精神支援も直観的にわかるものではないでしょうか。落ち込んでいるときやイライラしているときに、周りの人に話を聞いてもらうだけで随分と救われます。そのような心の支えとなる関わりのことを指しています。
これら3つの支援について、それぞれ誰からの支援が重要な役割を持つのかについて、見ていきましょう。
職場学習に必要な支援を誰がしているのか
実際にそれぞれの支援が誰から得られることが多いのかは重要な論点です。本書では、上司、上位者・先輩、同僚・同期、部下・後輩の4区分で調査結果をまとめています。
業務支援は、わかりやすい順番となっています。上司、上位者・先輩、同僚・同期、部下・後輩の順という結果でした。職位の高いものが多く、低いものへと続いていきます。
職場における多くのコミュニケーションは上司と部下の間で行われています。組織目的を教え、仕事の達成度をフィードバックして、特定課業の指示という具体的な内容まで含まれています。
内省支援にも特徴が見られます。上司、上位者・先輩、同僚・同期からの支援はほぼ同程度で、部下・後輩は随分頻度が下がるようでした。自分自身で気付きを得るための問いかけは、上司だけでなく同僚や上位者からも得られるのでしょう。
その一方で、自分自身の振り返りのために、立場上、部下には相談しにくいという特性も見られます。
精神支援は他と少し異なります。精神支援を最もしているのは、同僚・同期です。次が上位者・先輩で、最も少ないのが上司と部下・後輩です。
頻度は少なくても能力向上の観点からは、上司からの精神支援は有用という結果も紹介されています。上司は部下に対して業務指示を中心にコミュニケーションしがちですが、もっと精神支援をした方が望ましいとも言えるでしょう。
学びの場は研修だけとは限らない
一般的に人材育成の施策を考える時、企業研修を想定することが多いかと思いますが、職場学習の全体を見渡して、OJTとOff-JTの両方からのアプローチが求められます。
人材育成の世界では「7・2・1の法則」と呼ばれるものがあると聞きます。ビジネスにおける学びは、7割が仕事上の経験から、2割が上位者・先輩からのフィードバックから、1割は研修や読書から得られるというものです。
特に2割の上位者・先輩からのフィードバックや1割の研修・読書は、外部からの支援に位置付けられます。ここをしっかりカバーすることで、7割を占める仕事上の経験からの学習の質を上げることができそうです。
ヤフーなどの企業では10年ほど前から、毎週上長と担当者で行う1on1という制度があって、フィードバックだけでなく、自分自身の内省を促す時間を多く持つようにしているといいます。
研修に対しては、コロナ禍をきっかけに今まで通りの研修を漫然とくりかえすことを止めて、ゼロベースで今どのような刺激を社員等のメンバーに与えていくべきかを考え直す企業が増えている実感があります。
場所や時間にとらわれない教育研修のあり方も求められますし、継続的に学び続ける仕掛けも必要でしょう。