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なぜ反田恭平の音に魅了されるのか? ショパンコンクール2位を裏付けた「肉体改造」

2021年11月02日 公開

反田恭平(ピアニスト)

反田恭平

去る10月21日、第18回ショパン国際ピアノ・コンクールでこれまでの日本人の最高位となる2位を受賞した反田恭平氏。これは1970年の内田光子氏の受賞に並んで51年ぶりの快挙である。

繊細さとダイナミックさを兼ね備え、まるでピアノとダンスをするかのような情熱的な演奏で世界中のファンを魅了する反田氏が影響を受けたもののひとつが、ロシア留学時代に観たバレエだという。

そんな彼のクリエイティブの根幹に関わるバレエの視点を含め、表現者・反田恭平の肉体について、バレエダンサーの山本康介と語る。【取材・文:神山典子、撮影:彦坂栄治(まきうらオフィス)】

※本稿は、反田恭平著『SOLID』(世界文化社)より一部抜粋・編集したものです。

 

理想の音のために始めた体づくり

【反田】ロシアに留学してよかったと思うことはたくさんあるけど、そのひとつが筋力トレーニングの習慣を作れたこと。留学してすぐ、自分とロシア人学生のピアノの響きには違いがあると感じました。

でもそれは体格的なことだけではなく、骨密度や筋肉量も関係あるんじゃないかと。ならば体を整えて筋肉の質を高めれば、自分の理想の音に近づけるかもしれない──。そうして始めた筋トレは、今、間違いなく自分の音を奏でるのに役に立っていると思います。

もともと人の体の仕組みに興味があったので、ピアノを弾くために必要な筋肉についてもいろいろ調べ、専門家にも話を聞いたけど、皆に共通していたのが体幹の重要性でした。僕は筋肉がつきやすい体質なので、筋トレで体幹を鍛え始めてからは、音量が大きくなったといわれるようになりました。

オーケストラとの演奏は、1対100で試合をし、その戦いを融合させて曲にしていくようなもの。ラフマニノフ、チャイコフスキーなどは、金管楽器やティンパニーが鳴り響くパートがあるので、ピアノの音はどうしても消えやすくなります。オーケストラに対応できるパワーある音を鳴らすためにも、これからもっと体幹を鍛えていきたいですね。

――反田氏の均整のとれた背中について、バレエダンサーの山本康介氏は次のように語る。

【山本】反田さんがピアノを弾いている姿を背後から見ると、脇が締まったまま前傾姿勢になっているのに胸筋が張っています。一見背中も丸く見えるけど、肩甲骨が下りていて、背中から腕を動かしているのがわかります。

その状態はバレエでいう前カンブレ(上半身を折ってへそをのぞき込むような動き)で、最も腹筋を使う姿勢です。

また、実際の椅子には背もたれがないのに、背もたれに背中を押しつけているような姿勢で演奏しているのも印象的でした。ピアノを演奏する際に、「自分が一番楽に弾ける」と感じる基本姿勢を確立されているのだなと思いました。

 

強靭かつしなやかな手のヒントは“プールの授業”

――手は言うまでもなく、音楽家にとっての命ともいえる重要なパーツだ。山本氏はピアニストの手の動きを、バレエに見立てて語っている。

【山本】バレエの動きは上半身が遊びになります。フォームポジションはあるけど、その古典的な形に捉われずに自分の表現をする、というのが上半身の動き。足の動きは絶対に決められたところに入り、誰がやっても同じ動きをしていなくてはいけません。そう考えるとダンサーの足は、ピアニストでいうなら正確に鍵盤を叩く、手にあたるのではないでしょうか。

【反田】実際にピアノの鍵盤に触れるのは、指の中でも第1関節より先の部分だけ。だから第1関節を強めることは、僕の、手のトレーニングテーマです。音を出すのは指を上から下に下ろすだけの作業で、それが88の鍵盤分、左右に動く。その縦と横の単純な動きの中で、どう指先を鍵盤に触れさせるか。

そこで音の個性ができていく気がします。僕の場合、指が鍵盤に触れた瞬間、指先を吸いつけるようにして、第1関節より先を少し自分のほうへ引っかくようにしています。それが音の強弱にかかわらず、芯のある音を出せる弾き方だと感じているので。

その方法を発見したのは、高校のプールの授業を受けていた18歳の時。水面を鍵盤に見立てて指を動かしていたら、第1関節を手前に引くような動きのアクセントを入れたときだけ、綺麗なウォータークラウンができた。

そのことを先生に話したら、それが正しい弾き方だと教えてくれて、以来この弾き方を意識しています。だからかどうかはわからないけど、指を含め手の筋肉は、自分でも驚くほど発達していると思います。

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