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精神科医が見続けた「体がSOSを出しても、ムリしてしまう努力家」の危うさ

2021年07月09日 公開

井上智介(精神科医・産業医)

井上智介

一生懸命になれるのはすてきなこと。でも、周囲の期待に応えようとしすぎて無理や我慢は禁物です。

もしかしたら、あなたは自分で思っているより、もう充分がんばっているかもしれません。

ほどよく力を抜くコツを知っておきませんか?

※本稿は、『PHPスペシャル』2021年1月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

がんばりすぎてしまうあなたへ

がんばることは、素敵なことですよね。あなたも周りからは、とてもがんばっていると思われているかもしれません。

しかし、心から、自分でそのがんばりを認めてあげられないと、「まだまだがんばりがたりない……」「もっとがんばらないと……」と、自分にプレッシャーをかける毎日が続いてしまいます。ところが、それは、もうがんばりすぎている状態なのです。

では、なぜあなたはがんばりすぎてしまうのでしょうか。

日本人は、周りとの協調性を重視したり、 謙遜したりすることが美徳だとする文化があります。あなたも、子供の頃に「周りに迷惑をかけてはダメ」「相手の気持ちを考えて過ごしなさい」と教え込まれたのではないでしょうか。

窮屈を感じつつも、そのような大人の言う通りに振舞うと、いい評価をされるので、子供ながらにうれしい経験でしたよね。ただ、これが続くと、自分の価値基準が、周りの大人からの評価に左右されると思い込むようになります。

そして、自分らしさを抑えてでも和を乱さないことが評価されると、それは、子供にとって成功経験となり、その行動がいつでも素晴らしいと考えるようになるのです。

その感覚が大人になっても抜けきらないと、周囲の目や空気ばかりを気にするようになります。誰かががんばっている姿や努力している姿を目にすると、あなたは限界を感じていても、休むことに罪悪感を感じて、無理をしてがんばってしまうのです。

さらに、自分の価値を自分で決めるのではなく、周りからの評価によって左右されると感じたままならば、何事も完璧にこなさないと不安でいたたまれず、際限なくがんばりすぎてしまうのです。

 

体のSOSをごまかさないで

私が「あんまりがんばりすぎないようにしてくださいね」と声をかけると、「調子が悪いときは、ちゃんとブレーキをかけるから大丈夫です」と返事されることがよくあります。

しかし実際には、このがんばることにブレーキをかけるのは、本当に難しいのです。その理由の一つとして、人間というのは、ピンチのときほど、自分が慣れている行動を取りがちだからです。

だからこそ、普段からとてもがんばっているあなたは、ピンチのときも「休む」といった変化のある選択肢をとれず、いつも通りに「がんばる」という行動を続けてしまい、どんどん自分自身を苦しめてしまうのです。

がんばりすぎると、最初は、頭痛や吐き気、めまいなどさまざまな体の症状が出てきます。これが、体からのSOSなのです。この時点で、「自分には大きな負担がかかっているから、がんばりすぎたらダメだ」と判断する必要があります。

しかし、このSOSを鎮痛剤などでごまかして、向き合おうとしなければ、いよいよ朝、目が覚めても思うように体が動かずに時間通りに出勤できなかったり、毎日の家事も思ったようにできなくなったりします。

さらには、ズドーンと気分が落ち込んで、あれだけ熱意を持ってがんばれていた仕事や楽しめていた趣味に対しても、まったく意欲を持てなくなってしまうのです。

この時点ではじめて、周りから見ても明らかに様子がおかしいといった理由で、心療内科に来られる人を私はたくさん見てきました。

やはり、心が悲鳴をあげてから長い時間が経ち、傷も深くなってしまうと、それだけ治療にも長い時間が必要になります。それはあなたの生活の質を大きく変える可能性すらあります。

あなたは今でも充分がんばっていますから、最初のSOSを見逃さずに、これ以上がんばらないようにしてください。

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