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仕事

中学生のホリエモンが「パソコン沼」にハマって気づいた人生のコツ

堀江貴文(実業家)

2022年03月26日 公開

 

初めて知った「働くことの意味」

そして、ここからがクライマックスだ。初めての成功体験についてお話ししよう。NECの「PC - 8801mkIIFR」という本格派パソコンを手に入れた僕は、プログラミングの沼にますますハマり、当時の標準言語BASIC(ベーシック)に次いで高度なマシン語をマスター。複雑なプログラムも構築できるようになっていく。

そんなある日、仕事のオファーが舞い込んだ。小学生時代に通っていた塾「全教研」が運営する英語スクールから、「パソコンを全入れ替えするので教材の移植を頼めないか」と打診されたのだ。

この塾はかなり先進的で、パソコンを使ったCAI教育(コンピュータ支援教育)を取り入れていた。当然、すごいパソコンが揃っている。そこに惹かれて僕は通い詰めていたのだ(もちろん授業なんて、そっちのけである)。

本来ならば、業者に委託するような規模のシステム移植。だが、パソコンが好きすぎる僕に、スタッフが目をかけてくれたのかもしれない。「これはチャンス」という直感に従い、二つ返事で引き受けた。

それから約1ヶ月。試行錯誤を重ねながら作業を進め、期日内にシステム移植を無事に終えた。報酬は約10万円。これが中2のときの僕にとって初めての成功体験だ。問題は、報酬金額の多寡じゃない。

僕という存在に気づき、「あいつにやらせてみよう」と思ってくれた人が現れたこと。実際に期待に応えられたこと。そして、僕の作ったシステムに、多くの人たちが驚き、喜んでくれたこと。僕の労力が、確実に講師や生徒たちの役に立ったこと。

それらを経験できたことは、本当に大きな収穫だった。僕は初めて"自分"という存在を他人に認められ、好意的に受け入れられたと感じることができた。

「これが『働く』という意味なのか」

このように、「好きなことで報酬を得る」という"初体験"は、人生のなるべく早い段階に済ませることが理想だと思う。なぜなら、その後の加速がつきやすいからだ。とはいえ、こんな話をすると、お決まりのセリフを返されてしまいがちだ。

「それは、ホリエモンだからできたんだよ」

でも、よく考えてほしい。生まれ育った家庭環境や両親の性格など、イタすぎる生い立ちを知ってもらえば、僕が"特別な存在"ではなかったのは明らかだろう。ここで、「好きなことでうまくいく」秘訣を、僕なりに言語化しておく。

まずニッチなジャンルでもいい、自分がハマれる「沼」的な対象を見つけること。それには、自分の感性ともいうべきセンサーを研ぎ澄ますしかない。「心を強くする」のは、その後だ。次の(1)~(3)のフレーズを繰り返せば、心は自ずと鍛えられる。

(1)「こんなことをしている人間は周りに誰もいないけど、気にしないでいい」(むしろ自分の希少価値が高まるからラッキー!)

(2)「悪条件(例:納期が短いなど)だけど、考え続ければ秘策を思いつくはず」

(3)「難しそうだけれど、自分なら成し遂げられるだろう」

これらの言葉を心の中で繰り返すうちに、「好き」「楽しい」という「快」の感情が、ネガティブな感情を打ち消し、目の前の作業にハマらせてくれるはずだ。

 

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