小さなことでもひどく落ち込んでしまうということはありませんか。1日を笑って生きるためには、どこかで落ち込んだ心を立て直さなければなりません。
そのために重要なことは、うまくいった場面を思い出してみることだと心理カウンセラーの武田友紀さんは言います。
月刊「PHP」は1947年に松下幸之助によって創刊され、おかげさまで本年4月、75周年(通算888号)を迎えます。
PHPとは"Peace and Happiness through Prosperity"の頭文字で、「繁栄によって平和と幸福を」という、松下幸之助の願いが込められています。
※本稿は月刊誌『PHP』2022年1月号より抜粋・編集したものです。
小さなことにもよく気づく"繊細さん"
「繊細さん」という言葉を聞いたことはありますか。ここ数年、テレビや雑誌などで取り上げられることも増えたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。
「繊細さん」とは、生まれつきとても敏感な人のこと。まわりの人が気づかない小さなことにもよく気づきます。
私自身も「繊細さん」のひとりであり、日頃はカウンセラーとして、繊細さんたちから仕事や人間関係の相談をいただいています。さて、繊細さんからよく聞く悩みに「小さなことでもひどく落ち込んでしまう」というものがあります。
繊細さんが持つ性質のひとつに「深く考える」というものがあります。自然体で過ごしていても、他の人が通常考えるよりも多くのことを考える性質です。
たとえば、小さなミスを注意されたとき。
「自分がもっと確認すれば良かった」
「あんな言い方しないでほしいけど、相手にも事情があっただろうから」
「なんで私はこうなんだろう」
など、いくつもの考えが浮かび、考え続けてしまうのです。
落ち込むのは気質のせい?
なお、「ちょっとした指摘を受けただけなのに、何日も落ち込んでしまう」など、起こった出来事に対して落ち込みの程度が強すぎる場合、繊細な気質だけが理由ではありません。
安心感の少ない家庭で育ったことで、なにか問題が起きたときに半自動的に「自分が悪いんだ」という感覚になり、それが影響している場合もあります。
そうした方は、職場など、人といる場面で「なにかひどいことが起こるんじゃないか」「また傷つくのではないか」と常に気を張っておられるんですね。
そうすると、心身ともに緊張し通しなので、疲れやすくなります。相談者さんから「大したことはしていないのに、1日終わるとぐったり。休みの日はひたすら寝ている」という話を聞くこともあります。繊細さゆえに考えをめぐらせている場合も、育った環境ゆえに自分を責めやすい場合も、のびのびと生きるポイントは同じ。
自分で自分の心を守れるようになると、落ち込みから回復しやすくなります。安心して過ごせる場面が増えて、疲れにくくなるのです。