結婚して10年...「発達障害を持つ夫」との関係を円満にした仏教の教え
2022年05月23日 公開 2024年12月16日 更新
どんな人でもイライラして、時には怒りに支配されてしまうことがあります。なかなか怒りが鎮まらず、どんどんストレスが溜まってしまうことも。しかし、イライラを我慢することは禁物。自分の感情に素直になることが大切です。僧侶の露の団姫さんに、怒りと上手に付き合う方法をご紹介いただきました。
月刊『PHP』は1947年に松下幸之助によって創刊され、おかげさまで本年4月、75周年を迎えました。
PHPとは"Peace and Happiness through Prosperity"の頭文字で、「繁栄によって平和と幸福を」という、松下幸之助の願いが込められています。
※本稿は月刊『PHP』(2021年5月号)より抜粋・編集したものです。
発達障害の夫と結婚して...
発達障害を持つ夫と結婚して10年。その症状は人によって様々ですが、夫の場合は「段取りが苦手」「集中力がない」などの特徴を持っています。そのような夫を、私も家族としてサポートしていますが、それでも、毎日のことですから綺麗ごとばかりではありません。
「夫は故意でやっているわけではない」と分かっていても、結婚当時、イライラせずにはいられない日々が続きました。例えば、夫はマニュアル化されていない物事が苦手です。「だいたい」や「暗黙のルール」等、感覚的なものが分かりにくいため、結果、「空気を読めない人」となってしまいます。
また、会話やコミュニケーションを極端に苦手とするため、いわゆる「報・連・相」が全くといっていいほど出来ませんでした。その都度、私は夫の尻ぬぐいに奔走してきましたが、「人の顔色を窺うことが苦手」という特徴も持つ夫にとっては、私の苦労などどこ吹く風。次第に、私は疲れ果てていきました。
イライラは「無くす」より「減らす」
ある日のことです。先輩僧侶から、「怒りは心の無駄遣いですよ」と言われました。確かにそうです。毎日イライラして、完全に心を支配されていました。ところが、悟りを開いているわけでもないので、「怒りを無くす」ことなど簡単に出来るわけがありません。
そこで、比叡山の修行で「欲は完全に無くすことはできないが、少なくすることは出来る」と学んだ経験から、「怒りを減らす」ことに努力の方向を変え、結果、怒りに縛られないようになりました。その方法とは、「怒りの時間を比較する」ことです。
例えば、嫌なことがあると、その怒りが何日も頭から離れないことがありますが、なかなか怒りが収まらないという焦りは、更なるストレスを生みます。しかし、その時間を比較すると希望の光が見えてきます。当初は30分続いていた怒りも、翌日には15分となり、翌々日には5分......と、徐々に短くなるからです。
この怒りの時間の比較こそ、「いつか怒りが消える」という、希望的観測を生み出します。こうして、「怒りを無くす」ことにとらわれることなく、「鎮めて」いくことができるのです。