結婚して10年...「発達障害を持つ夫」との関係を円満にした仏教の教え
2022年05月23日 公開 2024年12月16日 更新
日々の感情を飼いならそう
また、「怒りを無くした」と宣言する人の中には、怒りを「我慢」しているだけの人も少なくありませんが、これは大変危険です。なぜなら、怒りは自分自身の正直な感情ですから、そこに我慢というフタをしてしまうと、心に「ひずみ」が生まれてしまうからです。
そもそも日本では「我慢」を美徳とする風習がありますが、本来、「慢」とは仏教用語で、「自分本位の思い上がり」を意味しました。「我慢」という名の思考停止は問題解決に繋がりません。大切なのは、自分の感情を素直に認めたうえで、「飼いならす」ことです。
犬や猫などは、その行動の特性や性質、その性格を分かっていないと飼いならすことが出来ません。それと同じように、まずは自分の感情にフタをしないことが、怒りを飼いならす第一歩なのです。
怒りを飼いならすことが出来ないと、それは、ある日突然、他者や自分への暴力と成り得ます。しかし、上手く飼いならすことが出来れば、それは問題解決に繋がるアイデアや行動力へと成長します。近年、"幸せホルモン"とも呼ばれる「オキシトシン」(※愛情や信頼などの感情を呼び起こすとされるホルモン)にストレス軽減効果がみられることが分かりました。
発達障害を持つ人はオキシトシンの分泌が少ないともいわれていますが、ハグをすることで、オキシトシンの分泌が促されるともいわれています。そこで私たち夫婦も試験的にハグをするようになりましたが、本当に、ハグをするとお互いのイライラがスーっと引いていく実感があるため、これはおススメです。
でも、夫とハグしているなんて、よく照れずに言えますねって? だって、私は僧侶です。「法要(抱擁)」はお任せください!
【露の団姫(つゆの・まるこ)】
1986年生まれ。古典落語のほかに、自作の仏教落語も行なう。著書に『プロの尼さん 落語家・まるこの仏道修行』(新潮新書)、『聖♡尼さん「クリスチャン」と「僧職女子」が結婚したら。』(春秋社)など多数。人々の悩み相談に応じるため、兵庫県尼崎市に「道心寺」を建立した。